『ブレードランナー』はアニメ界も変えた 渡辺信一郎&荒牧伸志が熱弁
アニメ「カウボーイビバップ」などの渡辺信一郎監督が手がけた短編アニメーション「ブレードランナー ブラックアウト 2022」世界最速上映イベントが26日、スペースFS汐留にて行われ、渡辺監督とスピナー(飛行車)のデザインを担当した荒牧伸志監督が出席した。この日は「ブラックアウト 2022」に加え、同作のコンセプトアートも公開された。
【動画】短編アニメ「ブレードランナー ブラックアウト 2022」
本作は、映画史に燦然と輝くSF映画『ブレードランナー』(1982)と、35年ぶりの続編となる『ブレードランナー 2049』の空白を埋める物語。『ブレードランナー』で描かれた2019年から3年後の世界、アメリカ西海岸で起こった謎の大規模停電によって、レプリカントたちの登録情報が消えてしまったことによって起こる騒動を描く。
渡辺監督は、『2049』の制作スタジオであるアルコン・エンターテインメントから短編アニメーション制作のオファーを受けたことに「すごく『ブレードランナー』に影響を受けた人間なので、やりたい気持ちが半分、ハードルが高いのでやりたくない気持ちが半分でした」と胸のうちを明かすも「続編のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督のプレッシャーを考えたら、たかだか15分のアニメーションで、ハードルが高いとかプレッシャーなんて言ってられないですよね」と発言し、会場を笑わせた。
2人とも『ブレードランナー』には衝撃を受けたようで、渡辺監督は「個人的にも、アニメ業界的にもショックだった作品。SFをやる人間には避けて通れないほど大きな影響を与えた映画でした」と熱く語ると、荒牧監督も「間違いないですね。今でこそ塵に煙った高層ビル街とか、雨が降るちょっと汚い未来都市を、生活感を入れて描くのは当たり前になっていますが、この作品が全て始めたこと。今までは見たことなかった」と当時を振り返った。
この日は、『2049』のタイトルにちなみ、20時49分に「ブレードランナー ブラックアウト 2022」を上映。渡辺監督が「いまは実写の世界がアニメでほとんど表現できてしまい、境目がなくなってきている。この作品では、日本にいる2Dの手描きのアニメーターのすごい才能を活かしたいという思いが強かった」とこだわりを語ると、荒牧監督は「世界的にファンが多い作品と言いましたが、一番の『ブレードランナー』ファンは渡辺監督です。とにかくこだわりがすごかった」と苦笑いを浮かべていた。
『2049』では、本作の出来事を回想するようなシーンもあるという。その意味で、公開前に、オリジナル版『ブレードランナー』と「ブラックアウト 2022」を復習しておくことを両監督とも強く勧めていた。(磯部正和)
映画『ブレードランナー 2049』は10月27日より全国公開