有村架純、初の国際映画祭で“国民の妖精”と紹介される
現地時間13日、第22回釜山国際映画祭で「ガラ・プレゼンテーション」部門に正式招待された『ナラタージュ』の記者会見が行われた。同映画祭には何度も参加している行定勲監督と、今回が国際映画祭への参加が初めてとなるヒロイン役の有村架純が登壇した。
本作は、「この恋愛小説がすごい!」の2006年版で1位となった島本理生の恋愛小説「ナラタージュ」を、恋愛映画の名手である行定勲監督が映画化。主演に嵐・松本潤を迎え、ヒロインの有村架純との切なくも危ういラブストーリー。
司会のカン・スヨン執行委員長から「国民の妖精とも言われているそうですが、声も美しいですね」と紹介された有村は、「初めて海外の映画祭に参加させていただくので、とても楽しみにしていました。この作品が韓国のみなさんにも映画の余韻を楽しんでもらえたらと思います」と挨拶した。
続いて紹介された監督は、『ひまわり』(2000)が第5回釜山国際映画祭国際批評家連盟賞を受賞している。その際の審査員だったのが、司会を務めるカン・スヨン執行委員長だという。そんなこともあり監督は、「釜山は毎年のように来たい映画祭だ」と語り、「世界の人たちに観てもらう窓を開いてくれるのがここ、釜山だと思っています」と挨拶した。
今年も新作の『ナラタージュ』で釜山国際映画祭に参加できたことがとてもうれしいと語る監督は、「『ニュー・カレンツ』部門で批評家連盟賞を受賞していなかったら、今の僕のキャリアは築けなかっただろうと思います。釜山国際映画祭は国際的な活動をするため、そして世界に映画を観てもらうための扉を開いてくれる場所です。だからこそ、これからも釜山国際映画祭を応援したい。そして新作が出来たら必ずここ、釜山に戻って来たいです」と語り、釜山は第二の故郷と言っても過言ではないと、本映画祭への想いを伝えた。
また、本作の企画ができたのは2005年だと明かした監督。実現まで10年以上かかった理由について「恋愛劇は身近にある出来事を映画化するため、俳優が演じる感情の揺れがとても重要だ」と語り、演じる側にも過酷さを強いるため、俳優の選択が困難だったという。ヒロインを演じるに値する女優になかなか出会えなかったところ、有村に出会ったという。「まだデビューしていなかったのですが、有村さんにこの役をお願いすることになって、やっと映画がスタートした」と作品への思いを語った。
難しい役どころについて有村は「壊れるほど相手を想うことは、わたし自身はまだ経験したことのない感情でしたので、松本潤さんが演じる葉山先生への気持ちを持ち続けること、ただただ相手を想い続けることに集中しました」と撮影当時を振り返った。また「セリフだけで感情を読み取る映画なので当時23歳だったわたしには演じるのが難しいと感じていました。でもとても美しい映画にしてくださった監督に感謝しています」語った。
本作に出演するにあたり「プレッシャーはあったか?」との質問に有村は、今までやったことのない役柄だったので撮影前には緊張があったという。「撮影中も緊張感や集中力が必要なシーンが多くて大変でしたが、一つ一つのシーンを大切にしようと演じた」とのこと。さらに「共演者の松本潤さんはとてもプロフェッショナルな方でわたしだけでなく現場にいる全員に気を配っていらして頼もしく、坂口健太郎さんはいつもそばにいて安心させてくれました」と語った。
実際に恋をしていないと出てこない密度のあるセリフが多いと感じたという記者から、愛について質問された監督は、「日常の中にある恋愛、その生々しさを描きたかった」と答え、この映画に描かれる曖昧な関係については「恋愛のリアルを描くことは、観る人それぞれの価値観で感じるものだ」との考えを述べた。
「『ビリギャル』(2015)に続き女子高生を演じるにあたり違いなどは?」との質問に有村は、「『ビリギャル』の時は、とにかく楽しいことが大好きな女の子でした。不良になりたいというわけでなく、楽しいと感じることをし続けたい、という純粋な気持ちを持って演じていました。今回の役柄は、孤独を感じながら生きている女性です。自分の中に痛みという感情があるのだけれど、それを受け入れてしまう女の子でした」と振り返り、「全く性格が違うとはいえ、どのような違いがあるかという質問に答えるのは難しい」と語った。
最後にカン・スヨン執行委員長から「監督の作品には、若き日の焦燥というような、さまざまな繊細な感情を感じられます。韓国でどのように感じられるのか、その答えが今日わかるのではないでしょうか?」との言葉で記者会見は締めくくられた。
その後、行定監督と有村はインターナショナル・プレミアとして上映された劇場にも登壇。有村は「ちょっと難しいかなと思われた方もいるかもしれませんが、その気持ちとともに映画の余韻を楽しんでいただければと思います」と挨拶。続いて行定監督は「ものすごくゆっくりと流れる時間だったのではないでしょうか?」と観客に呼びかけながら、「どうしようもない恋愛の話をどうしても撮りたくて。その中には情緒があると思いますので、俳優たちの視線の行方を感じていただければうれしい」と映画の楽しみ方を伝えた。(取材・文:芳井塔子)
第22回釜山国際映画祭は10月21日まで開催
映画『ナラタージュ』は全国公開中