鈴木紗理奈、40代が転機に「意気込んで挑みたい歳」
脳性麻痺の幼い娘の介護に追われながら、認知症とうつ病を併発した母親に13年間にわたって5,000枚もの葉書を送り続けた女性の実話に基づく『キセキの葉書』(11月4日全国公開)で初主演を務めた鈴木紗理奈。自身も7歳になる息子の子育てと女優、ミュージシャン、タレント活動を両立させる多忙な日々を送る鈴木が、本作でマドリード国際映画祭最優秀外国映画主演女優賞を受賞。節目となる40代を迎えた自身の変化について明かした。
2000年代半ばまでは映画やドラマでも活躍していたものの、MUNEHIRO名義でのレゲエ・アーティストとしての音楽活動に没頭したことから、しばらく芝居の世界から遠ざかっていたが、2015年の映画『味園ユニバース』で久々に女優業に復帰。そこで楽しさを感じた鈴木は、40代ではまた女優業もやっていきたいと思っていた時にタイミングよく今回の出演依頼を受け、40歳となった今年にその初主演映画が公開されるだけでなく、賞まで得ることができた。そして、「やっぱり40歳って、女として大事な歳ですよね。意気込んで挑みたい歳というか」と元々40歳を大きな節目とも感じていたのだという。
40代は30代までとは明らかに違う感覚があり、若い時は「自分の可能性を信じたいし夢見がちだったので、例えば歌手としてジャマイカで大スターになりたいと思いつつ音楽にのめり込むような、いい意味での勘違いもたくさんしていた」そうだが、40代になった現在は、「本当にリアルな毎日というか、子育てもそうだし、求められることに応えていくような、地に足の着いたお仕事を一つ一つしっかりこなしていくことが大事」と感じているという。「夢のようなお話はそんなにない」ということにも気づいたそうだが、今回の初主演映画の出演依頼や賞の獲得などは「まさに奇跡が起きた夢のようなお話で、すごくラッキーだった」とも振り返る。
それでも、「こんな奇跡はそうそうあるものではないから、天狗になったり自分の実力を勘違いしたらアカンし、今回導いてくださった関係者の皆さんへの感謝を忘れず、これからも堅実に今のわたしができることをきっちりやって見せていくしかない」と身を引き締めた。そんなふうに感じられたのも、「40代になったら腹をくくらないといけないと思っていた」からだという。「離婚した直後は少しモテた時期もあり、セレブのような暮らしを夢見ることもあったけど、一生懸命に四苦八苦頑張っている人生の方がわたしらしくて楽しいし、そういう女性は素敵やと思う。そう考えると、仕事の仕方も含め自分のやるべきことがおのずと少しずつ見えてきて」。
「ホンマにこの仕事を続けていきたいんやったら、生きざまを応援されるようでないといけない」とも腹をくくった鈴木は、そう思い始めた頃に今回の『キセキの葉書』に出会い賞まで受けたことで、「多分この自分が思っている感じは間違っていない」とも信じることができた。そして「人生って楽じゃないけど、“浪速のシングルマザーどんとこい!”みたいな、鈴木紗理奈っていう女性の人生をピュア100%に生きていきたいなと思っています」と自らを見つめ直して辿り着いた40歳の現在の心境を力強く語ってみせた。(取材・文:天本伸一郎)