自費で来日!東方神起のPVなど手掛けたイ監督、大勢の観客に感激
2016年の韓国で実際に起きた拉致監禁事件をモチーフに描かれたサスペンス映画『消された女』が20日にシネマート新宿で初日を迎え、自費で急きょ来日したイ・チョルハ監督が、日本の観客に感謝のコメントを寄せた。
「保護者2人の同意と精神科医専門医1人の診断があれば、患者本人の同意なしに“保護入院”という名のもと、強制入院を実行できる」という韓国の精神保健法第24条を悪用。健康な親族を合法的に誘拐し、精神障害者に仕立て上げ、本人の意志に反して病院に強制入院させ、その財産を奪うという事件が韓国で起こった。本作ではその実話をモチーフにした恐怖体験を描き出すサスペンス作となっている。
本作のメガホンをとったのは、東方神起のPVをはじめ、数多くのPVやCMを手がけてきたイ・チョルハ。「好きな映画は岩井俊二監督の『Love Letter』で、恩田陸の小説を愛読している」と語るイ監督は、大学では日本語・日本文学を専攻するなど、日本びいきの顔も。そんなイ監督だけに、本作が日本で公開されると聞くや、自腹でのプロモーション来日を敢行。その心意気について尋ねられると「自分の映画というのは、監督にとっては子どものようなもの。親の立場としては、子どもが海外に出るということはうれしいことなので、この場に来させていただいたというわけです」と笑顔を見せた。
この日は300席以上のキャパシティーを誇るスクリーンで上映が行われたが、劇場に大勢の観客が入っている様子を見たイ監督は「自分の映画をこんなに大きな劇場で公開してもらえるなんて。とてもうれしいですが、ちょっぴり緊張しています」と感激の表情。また、同日に公開された大阪のシネマート心斎橋でも満席スタートと好調で、同劇場から「大阪にも来てほしかった」とラブコールを受けたことを聞くと、「この映画がずっと公開し続け、上映が一か月続くくらいにヒットしてくれたらまた来たいと思います」と誓った。
突如誘拐され、地獄に落とされる女性を演じたのは『ハーモニー 心をつなぐ歌』のカン・イェウォン。はかなく愛らしい魅力から一転、冷静で暴力的なキャラクターへと変ぼうを遂げているが、「彼女は最初に決まっていて。シナリオも彼女に寄せました。彼女はバラエティー番組でも人気を誇っていたんですが、そこから抜け出したいと感じていたんです。彼女とはしっかりと話し合い、ついてきてくれましたね」と満足げなイ監督。
一方、精神科病院にいる女性患者の日記を手にしたことで、その裏側に隠された事件を追うことになる報道番組プロデューサーに、ドラマ「いとしのソヨン」「エンジェルアイズ」のイ・サンユン。これまでのドラマで見せた甘いイメージを一新するような役柄について「もともとはすごくダメな、嫌な人というキャラクターだったんですが、それが嫌だなと思ってジェントルマンに変更しました」と説明するイ監督。この日の劇場には、イ・サンユンに対して大勢のファンからのお祝い花が届けられたが、そのことについて「今日もらった花を写真に撮って彼に伝えたいと思います。最近、彼は演技で悩んでいるところもあったので、このことを伝えれば彼の力になると思います」と日本のファンに感謝のメッセージを述べた。(取材・文:壬生智裕)
映画『消された女』はシネマート新宿ほか全国順次公開中