告白してフラた…バレンタイン後傷心な女性にすすめたい映画
バレンタインデーが終わって1週間。意中の男性に想いを告げ、晴れて恋人同士になれた幸せな女性もいれば、玉砕して傷心の日々を送っている女性もいるだろう。「こんな思いをするくらいならもう恋なんてしたくない……」そう思っている女性たちに、勇気を与えてくれそうな映画を集めてみた。(文:桑原 恵美子)
少しだけ勇気を出してアクセルを踏めば、前に進める
『しあわせへのまわり道』(2014)
ヒロインは、50代にして突然、夫に捨てられてしまった売れっ子書評家ウェンディ(パトリシア・クラークソン)。自暴自棄になり酒浸りの毎日を過ごすが、研修のため遠くの農場に行った最愛の娘に会いに行きたい一心で、インド人タクシー運転手のダルワーン(ベン・キングズレー)に運転を習い始める。教養があり思慮深く、ユーモアがある彼の的確な運転指導の中に、ウェンディは人生をやり直す知恵も見出していく。
「人(歩行者)は必ずしも正しい行動をとるとは限らない、だから注意深く見ることが大事」「少しだけ勇気を出してアクセルを踏めば、前に進み、行きたい場所に行くことができる」どれもこれも、夫に捨てられる前のウェンディだったら、特に心に刺さることもなかっただろう。後半、さまざまな気づきとともに、どんどん魅力的になっていくウェンディから目が離せなくなる。そして、「人生はほんの少しの勇気で大きく変えられる」ということに気づかされるのだ。
(クズも)あそこまで行くと、爽やかだな
『ミックス。』 (2017)
自分を手ひどく振って傷つけた相手に復讐し、見返してやりたい。そんな気持ちをすっきり成仏させてくれるのが、この映画だ。天才卓球少女だった富田多満子(新垣結衣)は、卓球のスタープレーヤーである恋人(瀬戸康史)に一途な純愛を捧げていたのに、卓球ペアの女性と二股をかけられ、破局。職場にも居づらくなり帰郷し、元恋人を見返すためだけに萩原久(瑛太)とペアを組み、全日本卓球選手権出場を目指す。
勝負の行方はともかく、なにしろ元恋人ペアがクズすぎて、中盤は2人が出てくるだけで腹が立つほど。だがそれを見た萩原の「あそこまで行くと、爽やかだな」というセリフがマジックワード。以降、2人が出てくるだけでその言葉が蘇って笑えてくるし、2人のゲスさが必死さの裏返しだとわかり、いじらしくさえ見えてくる。自分を傷つけた相手のことを思い出して憎しみがこみあげてきた時、ぜひ、この言葉をつぶやいてみて欲しい。相手がしたことの酷さに比例して心からの笑いがこみあげてくるし、その笑いが、人を憎む苦しさからあなたを解放してくれるはず。
君はガラスでできているわけじゃない
『アメリ』(2001年)
愛の告白が受け入れられなかったため、次の恋に臆病になっている人にはぜひ、『アメリ』を見て欲しい。ヒロインは妄想癖があり、リアルなコミュニケーションに臆病で、片想いの相手に近づけないアメリ(オドレイ・トトゥ)。そんな彼女を見かねて檄を飛ばすのは、先天性の病気で骨がガラスのようにもろいため、「ガラス男」と呼ばれているレイモン老人(セルジュ・マーリン)だ。「君の骨はガラスでできているわけじゃない。君は人生にぶつかっても大丈夫だ。もしこのチャンスを逃せば、やがては君の心は私の骨のように、乾いてもろくなってしまうだろう」。
もしかしたら次の恋でもまた、振られるかもしれない。でもそれであなたの人生が終わるわけじゃない。また恋は訪れるし、心の痛みを克服したあなたは、確実に前よりも強くなっているのだ。
恋の真の勝者は、人生の最後までわからない
『極道めし』(2011)
愛する人と結ばれることだけが、恋のすばらしさではない。そう教えてくれるのは、刑務所内の札付きの極道たちが、おせち料理を懸けて思い出の“めし”話バトルを繰り広げる『極道めし』だ。幼い頃に母に捨てられて愛を信じられなくなった主人公・栗原健太(永岡佑)。彼は一途に尽くすラーメン屋の店員・しおり(木村文乃)のわずかな収入を貢がせ、よそに女を作って裏切り続ける。そんな彼が刑務所の中で思い出す思い出の“めし”は、逮捕を予感しひそかに高飛びを企てている時、それを薄々知りながら、しおりが何も言わずに作ったインスタントラーメン。冷蔵庫に最後に残されたたった二つの食材は葱とキャベツだけ。しおりはそのふたつだけで精いっぱい工夫し、千切りキャベツを具にして、上から熱い葱油をかける。
客観的に見ればしおりは、健太に利用されただけの哀れな女かもしれない。だが彼の心には、「しおりのラーメン」とともに、しおりが永遠に生き続ける。恋の真の勝者は、人生の最後までわからない。
自分の人生の主役は、自分自身であるべき
『ホリデイ』 (2006)
ロンドン郊外とビバリーヒルズ、異なる土地に住む2人の女性が、よりによってクリスマス前に悲惨としかいいようのない失恋をするのが発端。2人はネットで知り合い、互いの家を2週間だけ交換して過ごすことを決める。2人のうち、特に心の傷が深そうなのは、何年も想い続けてきた同僚に目の前で他の女性と婚約発表されてしまう、ロンドン在住の新聞記者・アイリス(ケイト・ウィンスレット)。同僚は彼女の気持ちを知っていてそれを利用していたのだが、アイリスはそれに薄々気づきながらも、一縷の望みを抱いていたのだ。
ビバリーヒルズで出会ったアーサー(ジャック・ブラック)は、そんなアイリスにこう告げる。「映画なら君は間違いなく主演女優だ。なのになぜ脇役のように振る舞っているの?」。それを聞いたアイリスは、「自分の人生、主役は自分自身であるべき」と気づき、再び彼女を利用しようと訪れた同僚を「もうたくさん!」ときっぱり拒絶する。「やった!」「とうとう言ってやった!」と涙を流しながら笑うアイリスに、観ている人も拍手したくなるはずだ。コントロール・マニアだった映画予告編製作会社の社長アマンダ(キャメロン・ディアス)の“気づき”もまた、愛おしい。失恋は、仮面を脱ぎ捨て本当の自分に戻るための、人生の「ホリデイ」なのかもしれない。
そして奇跡を信じる
『マイ・ファニー・レディ』 (2014)
つらい時に、自分を支えてくれる言葉がある人は強い。女優を夢見る高級コールガールのイージー(イモージェン・プーツ)の場合は、オードリー・ヘプバーンの映画に出てくるセリフだ。彼女はある夜、初対面の客から「コールガールをやめるなら将来のために3万ドルをプレゼントしたい」という不思議な申し出を受け、夢だった女優の道へと踏み出すが、そこから偶然が重なり、複雑な人間関係が入り乱れて大混乱。オーディションでイージーに一目惚れした脚本家、イージーの元・客でストーカーと化している老人、彼に頼まれてイージーの探偵をしている老人(じつは脚本家の父)、脚本家の妻の精神分析医、演出家の妻に横恋慕している俳優。終盤、この全員がなぜか同じレストランに集合……というドタバタ劇は、古典映画のコメディのよう。
そしてこのことで女優をあきらめかけたイージーを支える『ティファニーで朝食を』のセリフが本当に心に沁みて、また映画を見直したくなるのは確実。ちなみにイージーが特によくつぶやいていたのが、ヘプバーンの「奇跡を信じる」という言葉。これはヘプバーンが信じていた7つのことのひとつ。
「私はピンクを信じる。カロリー消費には笑いが1番と信じる。キスをたくさんするべきだと信じる。強くあるべきだと信じる。何一つ上手くいかない時もね。幸せな女の子が1番可愛いと信じる。明日には明日の風が吹くと信じる。そして奇跡を信じる」。