全く別々の物語が一つの「家」の中で交錯!PFFグランプリ受賞作がベルリンで上映
第68回ベルリン国際映画祭
現地時間2月24日、第68回ベルリン国際映画祭でフォーラム部門出品作『わたしたちの家』の上映後、監督・脚本の清原惟、脚本の加藤法子、出演の大沢まりを、安野由記子が観客からの質問に答えた。本作は2017年のPFF(ぴあフィルムフェスティバル)でグランプリを受賞している。
父親を失った少女と、記憶を失った女性の、全く別々の物語が一つの「家」の中で交錯するさまを描いた『わたしたちの家』。清原監督が「脚本は加藤さんと一緒に最初の構想の段階から考えました。複数の世界が一つの映画の中に独立して存在しているものを作りたい、という構想から始まりました」と説明する本作は、パラレルワールドのような不思議な世界だ。
構想のきっかけを清原監督は「バッハのフーガを聴いている時に思い付きました。フーガというのは独立した旋律が重なって別々でありながら一つのハーモニーが生まれる構造が美しく、映画でも同じようなことができるのでは、美しい映画になるのではと考えました」と明かした。
ミステリアスながら日常の細部が美しいホームドラマでもあり、SFともいえそうな、一つのジャンルには収まり切らない映画だ。一つの物語での主人公を演じた大沢は「人間も人それぞれいろんな要素がありジャンル分けできないと思うので、映画もそれと一緒でジャンル分けできないのが面白く、とても気に入り、この作品に出たいと強く思いました」と本作を捉えたという。
一方、もう一つの物語で主人公(河西和香)の母親を演じた安野は「台本を読んだ時、世界観がわからなくて、自分の役に集中しようと思いました」と語る。「自分に娘がいて、この家で生活していたらこうするだろうということをやって、もし監督に違うと言われたら変えようと思っていたので、ある意味、丸裸にされたような感じで楽しい経験でした」。捉え方もそれぞれだ。
観る人に想像させる部分が、そのまま作品の豊かさとなっている。加藤が「皆さんが心の中で考えてください」と呼び掛けたラストシーンも余韻を残す仕上がりだ。(取材・文:山口ゆかり / Yukari Yamaguchi)