映画ポスター制作の裏側って?『スリー・ビルボード』仕掛け人が語る!
16日、北海道夕張市で開催中の「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2018」内プログラム「映画業界ワークショップ」に20世紀フォックス映画 営業本部 / FOXサーチライト シニアマネージャーの平山義成氏が出席し、本年度アカデミー賞をにぎわせた『シェイプ・オブ・ウォーター』『スリー・ビルボード』などの日本での宣伝展開について解説した。
20世紀フォックスの子会社FOXサーチライト・ピクチャーズは、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』『グランド・ブダペスト・ホテル』など世界中の賞レースをにぎわせた映画を多数制作・配給してきた映画会社。平山氏は数々の名作を世に送り届けてきた同部門の日本での宣伝展開に携わり、近年は『シェイプ・オブ・ウォーター』『スリー・ビルボード』『gifted/ギフテッド』『ドリーム』『犬ヶ島』といった映画を手掛けている。
『シェイプ・オブ・ウォーター』『スリー・ビルボード』のポスター、チラシのビジュアルは、1990年代のミニシアターブームの時代にコーエン兄弟やデヴィッド・リンチの作品を手掛け、活躍してきた人物を招へい。作品のイメージに寄り添った、まさにミニシアターブームのポスタービジュアルを甦らせたようなデザインになったという。
『スリー~』のポスタービジュアルについて平山氏は「タイトルに密接に関係があるのですが、3枚の看板を入り口にして、強調したかった。何が起こるんだろうという雰囲気が伝わればいいなと思って、人物が入っていないデザインにしました」と解説する。
もともと、海外版ポスタービジュアルに写る3枚の看板は、裏側を向いていた。日本版では表向きにして、より看板を強調したいと考えたというが、そこで本国からのNGが入った。「一番左の看板が問題になったんです。一番端の看板に書いてあるメッセージが、英語圏では映画のネタバレになってしまうのでダメだと言われてしまった」とその理由を語った平山氏は、「そこでデザイナーさんのアイデアで、一番左の看板に霧をかけることにしたんですが、霧をかけたことで逆にサスペンス色が強まった。これは監督も一発でオッケーをくださいました」と振り返った。
その後、アメリカで映画が公開され「演技合戦がすごい」という評判が高まると、日本でも「俳優を前面に押し出すポスターに挑戦しよう」という声が飛び出してきた。そこで映画の場面写真から抜き出したフランシス・マクドーマンド、ウディ・ハレルソン、サム・ロックウェルら俳優陣の写真をコラージュしたデザインの日本版ビジュアルを提案したというが、本国の返事はノー。ハリウッドでは、役者の並び順は厳格に決まっている。また契約によっては、場面写真をポスターに使ってはいけないといったルールが厳密に決まっているそうで、そういったことをひとつひとつクリアしながら、ようや日本版ポスターの形に落ちついたという。
そんな平山氏は、映画宣伝マンに大切なものとして「映画に対する愛情」「それをやるためには体力が必要」「そして体力を支えるのは情熱」だと語る。「映画評論家の淀川長治先生もおっしゃっていたのですが、そして最近は“知性”も必要かなと思っています。映画をどう伝えるか、古典や美術、音楽などいろんなものを知っているとそれが差になって出てくる。それは肝に銘じるところですね」と会場に集まった映画ファンに向けて語りかけた。(取材・文:壬生智裕)
「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2018」は3月19日まで北海道夕張市・合宿の宿ひまわりをメイン会場に開催中