「宮本から君へ」OP誕生秘話 演出はあの大御所写真家!
新井英樹原作、池松壮亮主演の連続ドラマ「宮本から君へ」(テレビ東京系・毎週金曜深夜0時52分~)のエレファントカシマシの主題歌「Easy Go」をBGMにしたオープニングが「かっこいい」と注目を浴びている。OPの演出を手掛けた写真家の佐内正史に、本映像のコンセプトを聞いた。
本作は、都内の文具メーカーで働く営業マン・宮本浩(池松)が、恋に仕事にがむしゃらに奮闘するアツくて切ない青春ストーリー。数々の映画賞に輝いた2016年公開の映画『ディストラクション・ベイビーズ』の真利子哲也がメガホンを取り、再び池松とタッグを組む。
オープニング映像は、公園にたたずむ涙目の宮本のアップからスタート。タイトルが映ると同時にシャドーボクシングで大暴れし、シャウト! 唐突に樹の前で逆立ちしたかと思えば、しこを踏んでいるようなポーズをとり……と、不器用な宮本ののっぴきならぬ心象風景を表したかのような映像で、ラストのアップの表情がまた秀逸だ。
佐内いわく、これは宮本が陽にあたるシーン。「朝、夕方ではなく昼の陽」だったそうで、コンセプトとしては「撮影も演技もフェイクだってところを少しだけ入れたかった」という。泣きたいのか笑いたいのか、絶妙な表情を浮かべる池松には「バッ! とかダッ! とかニィーって、1分の中で泣いて怒って笑おう!」「1カットで行く! やってみよう!」とディレクション。一度OKを出したカットは確認することなく、その意図を「確認する事じゃないと思ったし、確認すると捕まえたオバケが逃げちゃうから」と説明し、一にも三にも、捉えた「一瞬」を刻むことへのこだわりがうかがえる。
ちなみに佐内は、原作漫画をスタイリストの伊賀大介から借りて読んだそうで、「この本は友達から借りたり、友達に又貸しする本。暑苦しい! 何度も読みたくない本」と独特の表現でその魅力を表している。
佐内は、2002年に第28回木村伊兵衛写真賞を受賞。妻夫木聡&池脇千鶴共演の映画『ジョゼと虎と魚たち』(2003)の劇中写真を手掛け、2008年に自主写真集レーベル“対照”を立ち上げ。2009年には多部未華子主演のNHK連続テレビ小説「つばさ」で番組冒頭のタイトルバックに使用されるカットを撮影したほか、本作の写真集を刊行。2006年には綾瀬はるか主演のショートムービー『たべるきしない』の撮影を担当。最新刊「銀河」が発売中。(取材・文:編集部 石井百合子)
佐内正史コメント全文は以下の通り。
<OP映像のコンセプト>
陽にあたる。エレファントカシマシの曲も陽にあたってるし。
昼の陽です。朝とか夕方ではなかったです。
撮影も演技もフェイクだって所を少しだけ入れたかった。
瞬間で撮影は終わらせたかった。
池松壮亮、宮本浩次、伊賀大介、真利子哲也、新井英樹、俺、の男祭りだから。
<池松壮亮の演出>
バッ!とかダッ!とかニィーって、1分の中で泣いて怒って笑おう!
1カットで行く!やってみよう!
OKテイクはプレイバック(確認)しませんでした。
確認する事じゃないと思ったし、確認すると捕まえたオバケが逃げちゃうから。
<原作「宮本から君へ」との出会い、魅力>
伊賀大介から借りたもの。
この本は友達から借りたり、友達に又貸しする本です。
あつ苦しい!何度も読みたくない本です。
早く友達に又貸ししたいですけど、冷蔵庫の横に積まれています。
熱くて、苦しい。濃度濃。