なぜディーン・フジオカ?深田晃司監督、キャスティング秘話明かす
俳優のディーン・フジオカが6日、映画『海を駆ける』公開御礼舞台あいさつに深田晃司監督とともに来場し、約1か月にわたってインドネシアのスマトラ島でロケを行った本作について当初は「狂気の沙汰としか思えなかった」ことをはじめ、初参加となった深田組を振り返った。
【動画】ディーン・フジオカ登壇『海を駆ける』公開御礼舞台挨拶イベント その1
『淵に立つ』で、第69回カンヌ国際映画祭ある視点部門の審査員賞を獲得した深田監督が、7年もの歳月を費やした本作。インドネシアの海で倒れているところを発見された正体不明の男ラウ(ディーン)が起こす奇跡を描いたファンタジーだ。
深い余韻に浸っている観客に向けて「皆さん、現実に戻ってきてください」と呼びかけ、笑いを誘ったディーン。一方の深田監督はこの日、かすれた声で「2時間前に急に声がでなくなって。(治癒能力を持つ)ラウに直してもらおうと思ったんですが」とあいさつ。すかさずディーンが劇中のラウ同様、手をかざして治癒の念を飛ばすしぐさを見せたり、力士のような声となった深田監督が「ごっつぁんです」とおどけるとディーンが「監督、腕を上げましたね」と褒め称えるなど、和やかな掛け合いが繰り出された。
本作のロケは、およそ1か月にわたってスマトラ島北端の港町バンダ・アチェで行われた。ディーンは、当初「映画館もない、機材もないような場所に、映画を撮影しに行くという行為が、僕には狂気の沙汰としか思えなかった」のだそう。しかし、「自分の知っているインドネシアじゃない。宇宙と地上がつながっているような、分からないもの、不確かなものがある未体験ゾーンに対するワクワクした気持ちと、それをどういう風に撮影するんだろうというドキドキとがありましたね」とも語り、撮影自体は非常に刺激的で、感じ入ることも多かったようだ。
人間を超越した存在であるラウというキャラクターについて、「自然そのものと結びついているイメージ。植物とか自然などを見たときに美しいと思うのと同様なことを思えるような人じゃないといけないと思ったので、そういう意味でディーンさんはラウにぴったりだった」と説明する深田監督。「実はラウという超然とした役にディーンさんはどうかと、何人かから薦められていたんです。そこで画像検索でググってみたら、まさにラウだと思いました」とキャスティングの経緯を語ると、ディーンも「Googleさんのおかげでこの映画に参加することができました。僕も毎日使っています」とちゃめっ気たっぷりに返し、会場を沸かせた。
初めての深田組に、「とにかく無駄がないですよね。オーバータイムもなかったですし。それって簡単に言っても、実行するのは本当に難しいことなんです」と言葉に力を込めるディーン。「本当に限られた日数の中での撮影だったんですが、負担を感じなかったですね。後から知ったんですけど、深田監督は国内でも映画産業の労働改善に向けて活躍している方だと。理想としているイメージと、実際にやっていることが一貫しているのを改めて知ったときに、だからかと気づきまして。それが深田組のスタイルだと思いましたし、僕も勉強になりました」と感服していた。(取材・文:壬生智裕)
映画『海を駆ける』は全国公開中