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大林宣彦監督作で異例の大抜擢!俳優・岡本太陽を直撃

『花筐/HANAGATAMI』で常盤貴子演じる主人公の夫に大抜擢された岡本太陽
『花筐/HANAGATAMI』で常盤貴子演じる主人公の夫に大抜擢された岡本太陽 - 写真:Joseph Reid

 肺がんで余命宣告を受けながらも完成させた大林宣彦監督の渾身作『花筐/HANAGATAMI』について、常盤貴子演じる江馬圭子の夫、良を演じた岡本太陽が、E-mailインタビューに応じた。

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 本作は、作家・檀一雄の原作を大林監督が映画化したもの。1941年春、叔母(常盤)が住む佐賀県・唐津に移り住んだ17歳の俊彦(窪塚俊介)は、美少年の鵜飼(満島真之介)、病気がちの吉良(長塚圭史)、お調子者の阿蘇(柄本時生)らと友情を深めたり、肺病に苦しむ従妹の美那(矢作穂香)に恋心を抱いたりと青春を謳歌していた。だが、そんな彼らにも徐々に戦争の影が忍び寄る。

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 ジャーナリストやアーティストとしてニューヨークで活動していた岡本は、2015年にニューヨークのジャパン・ソサエティーで行われた大林監督作品の回顧イベントで監督に初めて会ったそうだ。「その翌年、弟の結婚式に出席するため、映画のロケ地であり僕の地元でもある唐津に帰省したら、たまたま監督も脚本を練りに唐津に来られていて。ニューヨークでお会いした縁もあり、一緒に食事をさせて頂きました。その時、すでに唐津で大林映画が作られることは決まっていたので、地元の映画製作委員会を通じて、撮影期間は僕も帰省して何かお手伝いをすることにしました」。その数か月後、監督の妻であり『花筐/HANAGATAMI』の製作を務める大林恭子から、主人公の亡くなった夫役のオファーがあったという。撮影までの1か月間は、唐津でみっちりチェロを練習したそうだ。

 原作は、たった数十ページの短編小説だが、映画『花筐/HANAGATAMI』は169分にもおよぶ長編映画だ。「大林監督は、純文学の行間の部分を大きく広げられています。あくまで檀さんの作品に忠実ですが、ものすごく大林映画でもあります。僕の役柄は、ほぼ映画のオリジナルですが、映画の中では重要な役なんです。普段、原作のある作品に何か足したりすると、ファンがそれを認めなかったりすると思うのですが、この映画に関してはそれでもやっぱり『花筐/HANAGATAMI』。(大林監督の演出が)改めてすごいなと思います」と称賛した。

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花筐/HANAGATAMI
(C) 唐津映画製作委員会/PSC 2017

 その大林監督は、「戦争は実際の映像には勝てない」と本作ではあくまで虚構としての戦争を描いていると語っていたが、監督が描く今作の戦争をどう捉えたのだろうか。「戦時中が舞台ですが、この映画では一切、殺し合いは描かれません。戦争映画はプロパガンダ作品として作られたりした過去がありますし、戦争が美化されて描かれたりします。でもこの映画では、戦時中の若者たちの自由に生きられない切実な様子が描かれてます。それが描けるのは、第二次世界大戦の前後を知っている大林監督だからだと思います」と岡本。劇中の鵜飼のセリフである「青春が戦争の消耗品だなんてまっぴらだ」が象徴的であると語った。

 だが、今の世の中は戦前の状況によく似ていると大林監督は言っているそうだ。「それだけ監督の世代には身に覚えのある時代になってきているのだと思います。政治のリーダーたちを見ても排他的で独裁的な人たちが支持を集めるような世の中に生きています。『第三次世界大戦が起こってしまうかもしれない』といった国のリーダーもいましたし、大きな危機感を抱かざるを得ません」。

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 一方で、そんなときだからこそ、この映画に参加できたことはうれしかったと岡本はいう。「ただ地元で映画が撮られるだけでは、帰省しなかったはずです。大林監督と初めてお会いしたときに、何かを感じたから、戦争や平和について改めて考えたいから参加した映画でした。もう何回も観ていますが、観る度に戦争や平和について考え、映画と対話してます。答えなんか出ないかもしれないですが、観ればこの映画が語りかけてきます」と観客に感じて欲しい強い思いを語った。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)

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