スタジオポノック新作ついに完成!3人の監督が見どころアピール
『メアリと魔女の花』のスタジオポノックが新設した短編アニメーション制作レーベル「ポノック短編劇場」の第1弾『ちいさな英雄-カニとタマゴと透明人間-』完成披露プレミア試写会イベントが19日、都内で実施。米林宏昌、百瀬義行、山下明彦ら3人の監督のほか、声優陣の木村文乃、鈴木梨央、尾野真千子、篠原湊大、坂口健太郎、田中泯が一堂に集結。木村カエラがエンディングテーマ「ちいさな英雄」を歌唱した。
スタジオポノックが“子どもたちから大人まで楽しめるアニメーション映画を作りたい”という志からスタートした本プロジェクト。米林監督によるカニの兄弟の冒険ファンタジー『カニーニとカニーノ』、百瀬監督が母と少年の絆を描く『サムライエッグ』、山下監督が、ある孤独な男をアクションシーン満載で活写する『透明人間』の3本で構成されている。
3本にはそれぞれテーマがあり、『サムライエッグ』の場合は「歯」。百瀬監督は「3本それぞれテイストが違うので楽しめると思います。『歯』に関しては、生命とか生きているとか、そういうものの象徴として見てもらえるといいなと思っています」と紹介。
『サムライエッグ』で母の声を担当する尾野は「この物語の中で歯がちょっと出てくるんです」と百瀬監督に付け加えつつ、「アフレコというお仕事はあまりやったことがなくて、声優さんのお仕事は超すごいなって改めて尊敬しました」と収録時を振り返る。尾野のみプレスコ方式(映像よりも先に声を収録すること)で行われたそうで、百瀬監督は「俳優さんなのでセリフを話している時にこそ演技が出る。尾野さんの話し方を見て絵を描いたりしました」と意図を説明した。
一方、米林監督は「へとへとになりながら作りました。全編“カニ語”で喋っている面白い作品です」と『カニーニとカニーノ』の特徴をアピール。カニ兄弟のカニーニの声を務めた木村は「アドリブが多いアフレコでした。カニ語という面白い言語を大人たちが真剣に考えるっていうシュールな現場で楽しかったです」。鈴木も「木村さんと試行錯誤しながらやれました」と収録を楽しんだ様子。
そして、『透明人間』のキーワードは「存在」。山下監督は「ほかの2本と違って特殊な作品。ギョっとするかもしれませんが、怖がらずに観てほしいです」とアピール。「そこにいるんだけどいないも同然という扱いを受けている人たちを描いています」と述べ、本作で目の見えない男の声を演じた田中は、アフレコでも目をつぶってセリフを入れる職人技を見せたという。田中は「見えて(いる状態で)話すのと見えないで話すのとでは全く世界が違うと思ったので」とその理由を少し照れくさそうに紹介。
終盤には木村カエラが登場し、エンディングテーマを生披露。「まっすぐで明るい曲にしようという思いがありました。帰るときに皆さんが口ずさんで帰ってくれると嬉しいと思いながら作ったんです」と思いを口にした。「親子でこの映画を見てほしいという西村(義明)プロデューサーの願いもあったので、親の無償の愛を入れて、子供がのびのび育っていく喜びが表現できればいいなって。西村プロデューサーに曲を聴いてもらうのに緊張して、家で泣いてしまったんです。これは作り手の方たちの気持ちに合っているのか、と思うと聴いていただくのが怖くて」とプレッシャーを背負いつつの制作過程も明かしていた。(取材・文:名鹿祥史)
『ちいさな英雄-カニとタマゴと透明人間-』は8月24日より全国公開