佐藤浩市、三國連太郎との共演作の少なさに悔い
俳優の佐藤浩市が24日、大分県由布市湯布院公民館で開催中の第43回湯布院映画祭の特集上映「闘う男 九つの貌 佐藤浩市特集」シンポジウムに出席、相米慎二監督、そして父・三國連太郎について言及するひと幕があった。この日は『雪に願うこと』の脚本家・加藤正人、そして『GONIN』『雪に願うこと』の編集・川島章正も来場した。
名優・佐藤浩市の100本近い映画出演作の中から選んだ9本の代表作を上映するこの特集。24日は『阿部一族』『犬死にせしもの』『GONIN』『あ、春』『雪に願うこと』の5本が上映された。上映後は、この5本の出演作を中心に、佐藤の映画人生を大いに語り尽くすシンポジウムが実施された。
そんな流れから「佐藤浩市は受けの芝居が多いのでは」と指摘されると、「僕が何本か主役をやったほとんどの作品が受けの芝居ですね。攻めていく主役はほとんどないです。攻めた主人公をやったのは、(偽物の映画撮影で熱演する三流役者を怪演した)三谷幸喜監督の『ザ・マジックアワー』くらい」と返答し、会場を笑わせた。
そんな中、『魚影の群れ』『あ、春』などで組んだ故・相米監督(2001年に逝去)がもしも生きていたらと観客から聞かれるひと幕も。それに対して「果たして相米慎二が今、生きていたら幸せなのかどうか」と切り出した佐藤は、「実は『魚影の群れ』で本当に彼が狙いたかったオープニングカットというのは、大間の海をマグロの大群がグーッと泳ぎ、その魚影を俯瞰(ふかん)で映していくというもの。そして海岸に向かっていきながらも、マグロはフッとそれていく。でも空撮のカメラがそのまま海岸に行くと、砂場に僕と(夏目)雅子さんがいて。(本編冒頭にあった)二人でのシーンが始まるというものだった」と解説。
そして「1983年当時は、そんなことを言ったらどのスタッフも、相米さんがバカなことを言い出したよと一笑に付したわけです」と続けた佐藤は、「でも今なら相米さんがやりたいことはCGで可能なんですよ。でも相米慎二という男がそれをいさぎよく受け入れるのか。それを思うと、なんとも言えない気持ちになる。相米さんは(亡くなるのが)早かったなと思う反面、映画監督としてはあの時で良かったのかもしれない。もちろん僕は友人でもあったのでとても寂しいですけど、そういう思いがあります」と故人を偲んだ。
また、映画『美味しんぼ』で父・三國連太郎(2013年に逝去)との共演に葛藤があったのでは、という観客の指摘には、「言われるほどの葛藤はなかったですけどね」と返答するも、「ただ残念だなと思ったのが、僕も三國も(共演に)ハードルを上げ過ぎちゃったところがある。だから三國と『美味しんぼ』をやった後は何もやる気が起きなくなっちゃった。でもそんなに考えこまないで、若い頃からちょっとずつでも一緒にやっていれば、あと何本かは共演作はあったのかなという悔いはあります。だからうちの坊主(俳優の寛一郎)には、あまりハードルを上げずにやろうなとは言っていますけどね」と付け加えた。(取材・文:壬生智裕)
第43回湯布院映画祭は8月26日まで由布市の湯布院公民館にて開催中