全米大ヒットホラー、主演女優が母親としてのトラウマを明かす
注目のホラー映画『クワイエット・プレイス』(9月28日 日本公開)について、主演を務めたエミリー・ブラントが、フォーシーズンズホテル・ニューヨークでインタビューに応じた。
本作は、音に反応して人間を襲う“何か”が潜む世界で、音を立てずに生き延びようとする一家を描いたホラー作品。リー(ジョン・クラシンスキー)&エヴリン(エミリー)夫妻は、聴覚障害の娘と活発な息子らと共に、日々の生活では手話を用い、裸足で歩くなどして、決して音を立てないというルールを固く守りながら静寂を保って暮らしていた。しかし、エヴリンの胎内に新しい命が宿ったことで、一家は新たな危機にさらされていく。ジョンは、出演・監督以外に、脚本・製作にも携わっている。
今作で初めて夫のジョンとタッグを組んだエミリー。撮影前は、お互いが良い駆け引きをしながら製作に関わろうとしていたそうだが、撮影現場での姿を互いに見たことがなかったため、(夫婦として)微妙な境界線を引かなければならないのだと思っていたと明かす。「撮影に入ると『それには同意できないわ』と(現場で)言い争ったこともあったの。それでもうまくコラボでき、撮影中はクリエイティブな面に関しては、ほとんど意見が一致していたと思うわ。ジョン自身も俳優だから、感情的なシーンでは俳優たちに自由に演技をさせていたこともあったわ」と夫の監督手法を評価した。
本作では、音に反応して襲撃してくる何かによって家族は恐怖にさらされるため、沈黙の中で暮らす家族が描かれる。「家族にとって音は敵だけれど、その音によって、わたしたち俳優はさまざまな動き(裸足で歩くことなど)のアイデアを膨らませることができたの。根本的な緊張感が俳優同士にあったから、皆、大変だったとは思うけど、せりふのあるシーンよりも挑戦が必要ということではなかったと思うわ。沈黙でいることの方が、(体全体で表現するため)自由な演技の幅を感じられたのよ」。だが、エミリーの見せ場となる出産シーンだけは、全く別物の大変さだったのだとか。1週間かけて撮影し、撮り終えたときはかなり疲れていたと思わず本音を漏らした。
また、本作では母親として「最悪の悪夢であると思う」というトラウマも体験したと語る。「普段から子供がどこにいるのか常に気になるタイプなの。今作のようにひょっとしたら、子供を守りきることができないかもしれないという状況は、本当に怖いと思うわ。これまで、映画でこんな体験をしたことがなかったから、個人的に役柄に深く入り込んでいくことさえも怖かったくらいよ。ただ、役柄に深く入り込んだことで、このキャラクターを完全に把握できたと思うの。これまでのわたしの作品の中でも、最もパーソナルな役柄になったわ」。
最後に今作を初めて観た感想を聞いてみると、「実はジョンが編集のラフ作業をしていたとき、少し映像は観ていたの。でも、全編はサウス・バイ・サウスウェスト(音楽祭・映画祭・インタラクティブフェスティバルなどを組み合わせた大規模イベント)で、観客と一緒に鑑賞したわ。観客がどんな反応するかわからなかったから、とてもスリリングな体験だったわね」とエミリー。ホラー映画を鑑賞するのは好きではないという彼女にとって、今作はかなり怖かったそうで、「2度ほど飛び跳ねてしまったくらいよ」と付け加え、その出来栄えに自信をのぞかせた。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)