佐藤健、2018年多作の理由明かす 20代が終わる寂しさ
昨年後半から今年にかけて、俳優・佐藤健(29)の快進撃が止まらない。映画『亜人』『8年越しの花嫁 奇跡の実話』『いぬやしき』でスクリーンを賑わせ、NHK連続テレビ小説「半分、青い。」、TBSの連続ドラマ「義母と娘のブルース」でお茶の間を席巻。特に長丁場だった朝ドラの“律”役に対しては、ロス状態を告白するほどのめり込んだ。そんな多忙な中、モロッコロケを敢行した主演映画『億男』が10月19日より公開される。今年、より精力的な活躍を見せた佐藤だが、そこにどのような理由や狙いがあったのか、話を聞いた。
毎年、佐藤は、ファンに向けた配信番組「たけてれ」で書き初めを披露し、その年の目標を発表しているそうだが、昨年は「はたらく」と書き、今年は「ファンサ」(ファンサービス)と書いた。その真意について、「もうすぐ20代が終わるんだ、という思いが大きくなった」と言葉をかみしめる。「20代前半から中盤にかけてはどちらかというと作品数を抑えてきたので、他の同世代の俳優と比べて作品数はかなり少ないのではないかと思います。その選択によって今の自分があるとも言える。ただ……」と心を整理するように20代への思いを語る。
「やっぱり、20代が終わると、次第に若さも失い、役も徐々に変わっていきますよね。『今でなければ二度とできなくなる役がある』と思ったときに、やはり、人生は1度きり、悔いが残らないようにやり尽くしたいなという思いが強くなった」と心境の変化を吐露。「制服姿も、『まだ、大丈夫』と言ってくれる人がいたから『半分、青い。』でチャレンジしましたが、見た目も年々変わっていくし、いつか本当に無理な日が来るわけだから、そうなる前に着ておこうと。『20代の佐藤健をたくさん残しておきたい』そういう思いが、僕に『はたらく』と書かせたんだと思います」
「はたらく」に関しては、「自分のエゴ」と語る佐藤だが、今年書いた「ファンサ」に関しては、逆に「初心に返る」という思いが込められているそうだ。「20代前半のころは、毎日ブログを書いたり、ファンイベントも積極的にやったりしていたんですが、最近、全くやっていないなと思って。しかも、テレビドラマも(2015年の『天皇の料理番』以来)出ていなかった。それでも応援してくれるファンの方がいてありがたいと思って。その感謝の気持ちが、(毎日、お茶の間に登場する)朝ドラと連ドラに出演するきっかけになった」と胸の内を明かす。
特に長丁場だった「半分、青い。」では、クランクアップの際、「律と離れるのが寂しかった」というほど役にのめり込んだ。「撮影が終わって“役が恋しい”という経験は結構ありますが、今回は接する時間が長かったので、寂しい気持ちがいっそう強かったかもしれないですね」と述懐。さらに、愛着のある役は、「友だちと同じ」と語る佐藤は、「何か月か濃密に過ごした友達と別れるときって、すごく寂しいじゃないですか。でも、その後、10年、20年、会わないことは普通にある。かといって、その存在がなくなるわけじゃないし。そういう気持ちに似ているかもしれない」と思いを伝えた。
そんな佐藤の最新主演映画『億男』は、『世界から猫が消えたなら』の原作者・川村元気の同名小説を、『るろうに剣心』シリーズの大友啓史監督が映画化したマネーエンタテインメント。佐藤は、宝くじで当選した3億円を持ち逃げした親友・九十九(つくも/高橋一生)の行方を追う主人公・一男を演じている。「自分が演じてきた役の中で、一番ダサくて面白い人。そういった意味では愛着はものすごくある」と語るように、これまでにない俳優・佐藤健をスクリーンで目撃することになるだろう。お金とは何か、真の幸せと何か、3億円をめぐる人生を懸けた大冒険が、きっと“律ロス”を吹き飛ばしてくれるはず。(取材・文:坂田正樹)
映画『億男』は10月19日より全国公開