榮倉奈々の共感誘う魅力 「僕らは奇跡でできている」プロデューサー語る
高橋一生主演の連続ドラマ「僕らは奇跡でできている」(カンテレ・フジテレビ系で毎週火曜夜9時より放送中)で番組プロデユーサーを務める豊福陽子氏が、才色兼備でありながら恋も仕事もうまくいかない歯科医・水本育実(みずもと・いくみ)役に榮倉奈々を起用した理由を語った。高橋演じる動物行動学者の相河一輝(あいかわ・かずき)の“ある言葉”に動揺する育実のリアリティーは、いかにして生まれたのか。母になってますます深みを増した榮倉の女優としての“進化”とは?
自分の好きなことに熱中するあまり、職場のルールや空気を読むことができない大学講師・一輝(高橋)が、周囲の常識や価値観を揺さぶる本作。共にプロデューサーを務める千葉行利氏の推薦で、高橋に一輝役を打診することになった豊福氏は、「予想していた100倍の情報量で本作への熱意が返ってきた」と目を丸くする。
そしてその熱い思いは、セリフ一つ一つの表現にも見てとれる。「第1話で、育実をウサギに例えた一輝が、『ウサギはカメを見下している』と言い放つシーンがありますが、あれは一輝からすれば、ウサギを否定しているのではなくて、『ウサギなりにがんばっている』ということを肯定的に伝えているだけ。だから、そのセリフの言い方をとても繊細に考えていましたね」と述懐。さらに、「育実はその言葉を『嫌味』と受け取ってしまうのですが、それは『本質を言い当てられた』という思いが彼女の中にあったから」だと分析する。
一方、自身をウサギと指摘する一輝の言葉が心にグサッと突き刺さり、落ち込む育実。エリートで真面目、その上、美しさも兼ね備え、一見、怖いものなしに見える才女の“闇(あるいは病み)”を、榮倉はリアリティーあふれる演技で見事に体現している。彼女の起用について豊福氏は、「若いときは少女漫画を実写化した映画のヒロインをたくさん演じられていて、かわいいイメージを持っていましたが、その一方で、芯の強さ、意志の強さも同時に感じていた」と、榮倉の本質的な部分に着目していたことを告白。
そして、結婚、出産などを経て、女優業に本格復帰した榮倉の姿に、「いい年の重ね方をされて、今までとは違う大人の女優としての魅力を感じた」という豊福氏は、育実役を迷うことなくオファー。「育実という役は、言葉だけを捉えると、男女から嫌われそうなタイプですが、榮倉さんに演じていただければ、がんばっている女性の、がんばっているがゆえの『不器用さ』をリアルに表現し、女性の視聴者に『わかる!』と共感していただけると思った」と強調。榮倉自身も、「一度、一生さんと共演したかった」と出演を快諾したそうだが、一輝と絶妙に絡む育実の存在が「このドラマを地に足が着いたものにしている」と豊福氏は語る。
ドラマはまだ始まったばかりだが、育実をはじめ、固定概念に縛られない一輝の影響を受けた人たちが、自分の置かれた状況を受け入れ、どんな出口を見つけ出していくのか? 毎話、巻き起こる“さざなみ”のような出来事の積み重ねが、後半に生きてくるという豊福氏。「最終話では、予想を遥かに超えた世界に一輝が連れて行ってくれるでしょう」と最後は意味深な言葉で締めくくった。(取材・文:坂田正樹)