吉田羊、息子を傷つける母役 子役の手紙に思わず涙
女優・吉田羊が17日、新宿ピカデリーで映画『母さんがどんなに僕を嫌いでも』(公開中)の公開記念舞台あいさつを主演の太賀らと行った。息子(太賀)を拒絶する母を熱演したが、葛藤もあったという。太賀と小山春朋(幼少期の息子役)からそれぞれ、撮影現場では伝えられなかった思いを手紙やスピーチで告白されると、吉田は一瞬ほろりと涙をこぼした。
漫画家・歌川たいじの実体験をつづったコミックエッセイを映画化した本作。親からも友達からも愛されたことがない青年が、壮絶な過去を乗り越えて、自分を拒絶してきた母の愛をつかみ取るまでを描いている。舞台あいさつには森崎ウィン、御法川修監督も参加した。
太賀は「吉田羊さんとお芝居で面と向かって対峙するということは、役者にとっては生半可なことではない」とコメントし、「素晴らしい女優さんですし、芝居をするうえでこれほど緊張感を持って挑める相手もいない」としみじみ回顧。いざ撮影現場に行ってみると、どうすればいいかわからなくなることもあったというが「もうちょっと一緒にいたい」という気持ちは消えなかったといい、「羊さんとの演技なら自分はどこまでもいけるという気持ちでした。ラストシーンでは僕ができることはすべて羊さんに投げたつもりです。それを羊さんが受け取ってくれて本当に感謝しています」と言われ、吉田も嬉しそうな表情を見せた。
主人公の幼少期を演じた小山は手紙を用意。「羊さんは映画の中では結構怖いお母さん。でも、現場では僕のことを本当にずっと思ってくれていました。どうすれば危なくならないかとか真剣に考えていてくれて、羊さんが僕を認めてくれている気がして、とても嬉しかったんです」「撮影が終わって羊さんが最後の日に僕を抱きしめてくれたのが、とても嬉しかったです。僕は羊さんのことが大好きです」と読み上げると、吉田は思わず涙をこぼした。
息子を心身ともに傷つけてしまう母役とあり、吉田は「撮影中は、愛情がわいてしまうといけないので、(小山に)触らなかったんです。オールアウトの日に声をかけると、僕は羊さんに嫌われていると思っていましたって」と述懐。「わたしの役づくりのための行動を子役という立場で、この小さな体で受けとめなきゃいけなかったんだと思うと、思わずごめんねって。抱きしめました。こんな言葉をいただいて母は幸せです」としみじみ。
太賀に対しても、ただならぬリスペクトを感じていた様子で「この映画を受けた理由は、主演が太賀くんと聞いたから。現場でのたたずまいは、歌川たいじさんと全く同じでした。地響きがするような芝居で、太刀打ちができなくて。改めて太賀くんに対峙できるような俳優にならなければいけないって思いました」と太賀に感謝していた。(取材・文:名鹿祥史)