菅田将暉、デビュー10年目の決意
俳優として時代の最先端を走り続け、2017年公開の映画『あゝ、荒野 前篇』で第41回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞ほか映画賞を総なめにした菅田将暉が、デビュー10年目の思いを明かした。
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全てが順風満帆に見えた役者業、ところがひとしきり不安を覚えていたのは、誰あろう菅田本人だった。「役の人生ばかりを生きていると、時々自分が分からなくなる」。そんな思いから音楽活動、ラジオパーソナリティーを積極的に始めた菅田は、現在「自分という土地に、どんな”家”(=菅田将暉)を建てようか。只今、土台作りの真っ最中」だと笑顔を見せる。
俳優デビュー10年目、いろいろと振り返る節目の時を迎えている菅田。NHK朝の連続テレビ小説「まんぷく」に出演が決まった際も、SNSで「丁寧に挑ませていただきます」といつも以上に気合いのこもったメッセージを投稿していたが、「10年目という意識ももちろんありますが、それ以上に、『ごちそうさん』をはじめ、以前、お世話になったスタッフさんにまた呼んでいただいたという恩もありますし、地元の大阪が舞台で、おじいちゃん、おばあちゃんも率先して観てくれるので、自然に気合いが入りました」と目を輝かせる。さらに昨年、多忙な役者業に加え、ラジオパーソナリティー、ソロ歌手デビューを果たした菅田は、3つのフィールドで才能を発揮している。だがなぜ、そこまで活動の幅を広げる必要があるのだろうか。
「音楽とラジオを始めた一番の理由は、『役以外の人生も生きたい』と思ったから。役のことばかり考えていると、自分の感覚がわからなくなるんです。自分の感情をしっかり持っていないのに、人の人生(役)を生きている場合ではないなと。役者業をやりながらも、普通に生きてきたつもりではいたのですが、その感覚が何だか物足りなくなってきて。だから、プライベートではなく、芸能活動の中で自分を思いっきり表現してみたくなったんです」
志は高いが、体は一つ。果たして菅田が意図する効果は得られているのだろうか。「ネガティブな意味ではないですが、今はそれが機能しているところと、思い通りにいかないところと両面ありますね。確かにおっしゃる通り、単純に体がもうあと2つほしいです(笑)」と本音もチラリ。「バランスよくやればいいのでしょうが、やっぱり音楽は音楽でやり始めると、とことんやりたくなってくるし、ラジオはラジオできちんとやりたくなってくる。今は、それを馴染ませようとしているというか……。例えば、自分が買った土地に『どんな家を建てようか?』と土台作りをしている真っ最中といったところですね」
そんな菅田が真摯に挑んだ最新作『生きてるだけで、愛。』(公開中)では、引きこもりの恋人・寧子(趣里)と本気で向き合えない等身大の若者・津奈木を抑えた演技でリアルに体現。『共喰い』以来、約5年ぶりにタッグを組んだ甲斐真樹プロデューサーのもと、受けに徹したビターな魅力を再びスクリーンに焼き付ける。昨今、弾けた作品が多かっただけに、「そろそろパーソナルな部分に寄り添った役をやりたかった」と吐露する菅田。10年目にして「土台作り」に取り組む男が、自身の感情を投影しながら役に挑んだ本作で、新たな扉を開く。(取材・文:坂田正樹)