自閉症の妹に売春あっせん…地方都市の暗部描く『岬の兄妹』拡大公開
地方都市の暗部に切り込んだ衝撃作『岬の兄妹』が、映画業界内外の圧倒的な支持を得て、3月1日の公開を前に急きょ拡大公開されることが決まった。本作は、ポン・ジュノ監督の映画『母なる証明』などで助監督を務め、鍛錬を積んできた片山慎三監督による長編デビュー作だ。
物語は、足が不自由であることを理由にリストラされた兄が、自閉症の妹が町の男に体を許し、金銭を受け取っていたことを知るところからスタート。罪の意識を持ちつつも、互いの生活のため妹に売春のあっせんを始める兄だったが、今までは理解できなかった妹の喜びや悲しみを知ることにつながり困惑する。そんな時、妹の心と体にも変化が起き始めていた……。兄役は『ローリング』などの名バイプレーヤー松浦祐也、妹役は『菊とギロチン』で女力士役に挑戦した和田光沙で、本作でも体当たりの演技を見せている。
若手映像クリエイターの発掘を目的にしたSKIPシティ国際Dシネマ映画祭で優秀作品賞ならびに観客賞のW受賞を果たし、全国公開が決まった本作。当初、初日公開館数は6館の予定だったが、関係者やマスコミ向け試写会、国際映画祭などでの上映を経て、業界内外の圧倒的な評価を得ることに。そして急きょ、新宿バルト9や横浜ブルク13、T・ジョイ蘇我などでの公開が決定した。現在17館(封切り館の次に上映する「セカンド上映」を含む)での公開が決まっており、今後もさらに増えていく予定だという。
本作から「今村昌平、キム・ギドク、それにイ・チャンドンの空気も感じた」というポン・ジュノ監督は、「君からここまで大胆な作品が生まれるとは思ってもみなかった。良い意味で衝撃を受けたし、見事な作りだ」と片山監督のデビュー作を称賛。「この作品は多くの論争を起こすだろうし、君は既にそれを覚悟しているだろう。でも、もはや批判など恐れていないようにすら見える。何故ならこの作品は相当に緻密な計算の上に構成されていて、君は多くの問いにも的確な答えを用意しているだろうから」と続けている。
片山監督は「貧困、障害、性、犯罪、暴力……そういったものを包み隠さず描きました。観た方の価値観が変わるような映画になればと思いながら一切の妥協なしで二年間かけて作りました。是非、一人でも多くの方に観てもらいたいです」とコメントしている。(編集部・市川遥)
映画『岬の兄妹』は3月1日よりイオンシネマ板橋、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿バルト9ほか全国順次公開