どうなる?トラブル続きのアカデミー賞…授賞式後にも火種が
第91回アカデミー賞
まるで予測がつかない。今年のアカデミー賞を一言で表現するなら、それに尽きるだろう。受賞結果は言うまでもないが、セレモニーそのものも今年はどう始まって、どう進むのか、全く読めないのだ。オスカーにホストがいないというのは、この30年で初めてのことなのである。(Yuki Saruwatari/猿渡由紀)
今回のオスカーのホストにコメディー俳優ケヴィン・ハートが決まったのは、昨年12月のこと。それ自体例年より遅く、そこまでにも苦労があったことが推し量られる。なのに、決定後まもなく、ハートは過去のゲイ差別発言を蒸し返されたことで、自ら降板してしまった。アカデミーは彼をクビにするつもりはなかったのだが、公に向けて謝罪するようにと言われたことが、過去にもう謝罪をしているハートの癇に障ったのだ。その後、ハートはトーク番組出演中に、エレン・デジェネレスから「考え直して、ホストをやるべきだ」と言われ、ややその気を見せるも行動に移さなかった。どんどん時間がなくなる中、アカデミーは、ホストなしで行くことを受け入れざるを得なくなったのである。
それには、ある程度のメリットもなくはない。通常のセレモニーはホストのモノローグで始まるのだが、その分の時間が短縮できるのはその一つ。また、トランプ大統領の影響でハリウッドの授賞式イベントに政治色が強くなる中、そういった話題が出る余裕が減れば、一部の視聴者の反感を買わなくて済む。そもそも、授賞式はその名のとおり賞を授けることが目的なのだから、余計なものはいらないという声もある。
時間短縮と言えば、もう一つ大きなトラブルがあった。今年は、編集、撮影、メイク・ヘアスタイリング、短編実写映画部門の発表をCMの間に行うという変更を決めたところ、アルフォンソ・キュアロン、ギレルモ・デル・トロ、ブラッド・ピット、ジョージ・クルーニーらハリウッドの大物が大反発したのである。これらの部門も、受賞の瞬間は編集されて授賞式中にちゃんと放映されることや、対象の4部門は毎年入れ替わることなどをアカデミーは説明したのだが、反対の声はやまず、アカデミーはこの案を断念するに至った。
というように、何かとネガティブな話題が続いたが、明るいニュースもある。授賞式で、クイーンが演奏することになったのだ。故フレディ・マーキュリーの代わりに歌うのは、アダム・ランバート。『ボヘミアン・ラプソディ』でマーキュリーを演じたラミ・マレックは、映画俳優組合賞(SAG)と英国アカデミー賞を立て続けに受賞したところで、オスカーでも主演男優部門の最有力の位置付けだ。これまでの受賞スピーチでマレックは毎回ブライアン・メイとロジャー・テイラーに感謝してきており、本命の賞をもらう日にこの二人が演奏するとあれば、まさに最高の思い出になることだろう。
だが、マレックの受賞よりも手堅いのは、グレン・クローズ(『天才作家の妻 -40年目の真実-』)の主演女優部門と、マハーシャラ・アリ(『グリーンブック』)の助演男優部門受賞だ。一方で、助演女優部門は、SAGをオスカーに候補入りしていないエミリー・ブラント(『クワイエット・プレイス』)が受賞したことから、混乱状態。
もっと読みづらいのは、肝心の作品部門である。現状、アワード予測エキスパートの大多数は『ROMA/ローマ』を予測しているのだが、Netflix作品がオスカー作品賞を取ることが今後の映画界に与える影響を考え、躊躇する投票者がいることも考えられるのだ。実際、英国アカデミーが今作に作品賞をあげたこところ、イギリスの大手映画館チェーンは苦情を申し立てる公開状を送った。同じことが、アメリカのアカデミーにも待ち受けているのか。式が終わってからもまた新たなトラブルに直面することになるのだとしたら、本当にご苦労様である。
第91回アカデミー賞授賞式は、2月25日(月)午前8時30分よりWOWOWプライムにて生中継