スパイク・リー監督、『ブラック・クランズマン』の制作秘話を明かす
第91回アカデミー賞
スパイク・リー監督が、第91回アカデミー賞の作品賞ノミネート作としても話題の『ブラック・クランズマン』(3月22日 日本公開)について、ニューヨーク近代美術館(MOMA)で行われた特別上映後のQ&Aで語った。
本作は、1970年代に、アメリカ・コロラド州コロラドスプリングスの警察署で、初の黒人刑事となったロン・ストールワース(ジョン・デヴィッド・ワシントン)が、白人の同僚刑事フリップ(アダム・ドライヴァー)とタッグを組み、白人至上主義団体「KKK(クー・クラックス・クラン)」に潜入捜査するという実話を基にした作品。ロンの著書「Black Klansman」を基に、リー監督が映画化した。
映画『ゲット・アウト』を手掛けたジョーダン・ピールからの1本の電話で始まった今作の製作。黒人がKKKに潜入捜査するというハイ・コンセプトな話を映画化するアイデアを売り込んできたという。「そのときは、ロンについて何も知らなかったのだけど、彼が書いた原作を読んでみて、テーマにしていることが理解できたんだ」また、1970年代の設定にもかかわらず、劇中で起きていることは、トランプ政権下の現代においても適切な題材であることについて「それが今作を手掛けたいと思った理由だったよ。時代設定が1970年代であっても、現代にも反映している作品にしたかった。観客が映画館を出てきたときに、映画の内容よりも、現代の問題に向き合ってほしかったんだ。だから、僕と脚本家のケヴィン・ウィルモットは、意図的に現代の人たちにとっても考えさせられる内容にしたんだ」と説明した。
今作には、黒人として初めてエミー賞を受賞し、公民権運動にも関わったハリー・ベラフォンテが出演している。「ハリーは現在91歳だ。彼は今作で、1916年にテキサス州のウェーコで起きた黒人少年ジェシー・ワシントンの事件について語っているよ。実は、このシーンは撮影最終日に撮ったもので、ほとんどのスタッフは、当日までハリーが演じたジェロームという役を誰が演じるかわかっていなかったんだ。でも、スタッフには『最終日は、スーツとネクタイを着用して来い!』と伝えてあったんだ。だから、ハリーがセットに登場したときは、スタッフの誰もがシャープに見えたと思うよ」
1970年代から2017年に起きたバージニア州シャーロッツビルの事件まで、過去の人種差別の事件を捉えた映像が、エンディングで流れることについては「2017年の秋から撮影を始めたとこもあって、その年の8月にシャーロッツビルで起きたあの事件(白人至上主義者の集会に抗議した女性が死亡した事件)を、エンディングで使おうと思い立ったんだ。事件で亡くなったヘザー・ヘイヤーさんの母親であるスーザン・ブロさんの連絡先を入手し、彼女の許可を得て、写真を使用させてもらったよ」と経緯を明かした。
現在の白人至上主義団体「KKK」については「僕の中では、KKKもネオナチもそれほど変わらないヘイト・グループの一員だと思っている」と自身の見解を語り、締めくくった。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)