女性監督が主要賞!新しい風を感じる大阪アジアン映画祭
第14回大阪アジアン映画祭の受賞結果が17日に発表され、グランプリを受賞した『なまず』(韓国)のイ・オクソプ監督をはじめ、コンペティション部門の主要賞を女性監督、しかも大半が長編初という新人たちが独占した。ハリウッドをはじめとする昨今の映画界では、女性監督の比率の少なさが問題視されているが、新たな光を感じさせる結果となった。
同映画祭のコンペティション部門は、日本初上映となるアジアの最新作が対象となる。賞の行方は3人の国際審査委員に委ねられるが、そもそもコンペティション部門に選出された14本のうち8本が女性監督だった。暉峻創三プログラミング・ディレクターによると、特別風潮を意識した選考というわけではなく「純粋に作品の偉大さ、言い換えるなら今の世界にどれだけ存在価値を有しているかという評価基軸から選出を行った」という。
結果、国際審査員3人が選定したグランプリ、来たるべき才能賞、スペシャル・メンションはいずれも女性監督へ。それぞれ社会の片隅で生きる人たちを主人公にしながら、経済格差や就職難、悪しき因習などで閉塞感のある現代社会を見つめた、作家性の強い作品だ。
さらに『なまず』のイ・オクソプ監督と『アワ・ボディ』のハン・ガラム監督は、ポン・ジュノ監督らを輩出した韓国国立映画アカデミー出身で、共に長編デビュー作。『なまず』は韓国国家人権委員会が支援する人権映画プロジェクトで制作されている。『過ぎた春』のバイ・シュエ監督も名門・北京電影学院監督コース出身で、同作も中国映画監督協会が協賛する若手映画監督支援プログラムに参加して制作された。
彼女たちを含め、新人監督は14本のうち7人。受賞こそ逃したが、多くの観客が緻密な脚本と力強い映像に唸ったリー・チョクバン監督のサスペンス劇『G殺』は、香港映画発展局が新人発掘を目的に設立した「ファースト・フィルム・イニシアチブ」の基金で制作され、出演者の俳優チャップマン・トーら香港映画人が出演料を大幅カットして参加しているという。各国が力を入れている新人監督の発掘・育成が確実に実を結んでおり、アジア映画界の新たな潮流を感じさせた。(取材・文:中山治美)
受賞結果は以下の通り。
■グランプリ(最優秀作品賞。副賞:賞金50万円)
イ・オクソプ監督 『なまず』(韓国)
■来るべき才能賞(副賞:賞金20万円)
バイ・シュエ 監督 『過ぎた春』(中国)
■スペシャル・メンション
ハン・ガラム監督 『アワ・ボディ』(韓国)
リマ・ダス監督 『ブルブルは歌える』(インド)
■ABCテレビ賞(副賞:テレビ放映権として100万円)
エドウィン監督 『アルナとその好物』(インドネシア)
■薬師真珠賞(最も輝きを放っている俳優に授与。副賞:真珠装飾品)
主演女優ニルミニ・シゲラ 『アサンディミッタ』(スリランカ)
■JAPAN CUTS Award(N.Y.のジャパン・ソサエティーがエキサイティングかつ独創性に溢れると評価した作品に授与)
松上元太監督 『JKエレジー』(日本。今夏・テアトル新宿ほか全国順次公開)
■JAPAN CUTS Award/スペシャル・メンション
川添ビイラル監督 『WHOLE』(日本)
■芳泉短編賞(芳泉文化財団により創設された賞。副賞:次回作研究開発奨励金10万円)
ポーリー・ホアン監督 『じゃあまたね』(台湾)
■芳泉短編賞/スペシャル・メンション
サニー・ユイ監督 『2923』(台湾)
■観客賞(副賞:真珠装飾品)
オリヴァー・チャン監督 『みじめな人』(香港)