ベトナム映画史上最高記録を更新したアクション映画
ベトナム人女優ンゴー・タイン・バン主演のアクション映画『ハイ・フォン(原題) / Hai Phuong』(英題は『フューリー / Furie』)が現地紙などによると、ベトナム・アメリカ・カナダの興行収入が3月24日の時点で計2,000億ベトナムドン(約9億6,000万円。1ベトナムドン=0.0048円換算)を突破し、ベトナム映画の歴代興行記録1位を打ち立てた。昨年ハリウッドではオール・アジアン・キャストの『クレイジー・リッチ!』が話題となったが、アジア映画界にいい波が訪れているようだ。
【写真】フランスのチームと組んだ本格アクションと共にベトナム色を強く出した『ハイ・フォン』
同作は、ヴェロニカ・ンゴーの名前で『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(2017)に出演している人気女優ンゴーが製作・主演。ンゴー演じる取り立て屋を営むシングルマザーが、児童売買組織に誘拐された娘を奪回するサスペンスアクションだ。
ンゴーは『ソード・オブ・デスティニー』(2016)などでも見事なアクションを披露しているが、今回はさらにアメリカのUCLAで映画製作を学んだレ・ヴァン・キエが監督を務め、『ゴースト・イン・ザ・シェル』(2017)などを手がけたヤニック・ベンを筆頭にフランスからアクションチームを招き、ハリウッドにも負けないド派手なシーンに挑んでいる。日本初上映された第14回大阪アジアン映画祭でも評判を呼び、チケット完売となる人気の高さだった。
ベトナムでは2月22日に公開され、18歳未満は鑑賞不可のC18というレイティングながら、公開2週間で興行収入1,350億ベトナムドン(約6億4,800万円)を記録し、同国のアクション映画No.1となっている。その勢いに乗って3月1日にアメリカ、3月15日にはカナダでも公開され、Box Office Mojoによると27スクリーン(3月24日現在)で上映されている。
この成功でンゴーのますますのハリウッド進出が期待されるが、大阪アジアン映画祭の上映後にQ&Aに参加したキエ監督によると、ンゴーは本作でアクションは最後と宣言しているという。その分、スタントなしで全てのアクションを挑んでいるそうでキエ監督も「100%全力を尽くしたのだと思う」と奮闘したンゴーを労った。
日本での公開は未定だが、本作しかりアジア諸国の映画製作の進化にはめざましいものがあり、ハリウッド以外の作品をスクリーンで体感する機会が増えることを期待したいものだ。(取材・文:中山治美)