ハルク役マーク・ラファロ『アベンジャーズ』参加後も変わらぬ歩み
マーク・ラファロは、アベンジャーズに加わり大スターになった後、最もその影響を受けていないメンバーかもしれない。2012年の『アベンジャーズ』にハルク役で登場して以来、誰もが知るスターになった彼だが、出演作の選択に変化はない。家庭にも。そのマイペースぶりは、ハルクとなる前のブルース・バナー博士と似ているのかもしれない。
マーク・ラファロは1967年11月12日米ウィスコンシン州生まれ。チームを演じる俳優たちの中では年齢が高めで、最年長のアイアンマン役のロバート・ダウニー・Jrの2歳年下だ。初めてチームに加わった『アベンジャーズ』公開時は45歳。ほかのハルク俳優たちの公開当時の年齢は、『ハルク』(2003)のエリック・バナは35歳で、『インクレディブル・ハルク』(2008)のエドワード・ノートンは39歳。彼らに比べるとかなり大人のハルクだった。
アベンジャーズになる前から、映画ファンには演技派として知られていて、2010年の『キッズ・オールライト』でアカデミー賞助演男優賞に初ノミネート、ニューヨーク映画批評家協会賞など数々の映画賞に輝いた。このときラファロは43歳。決して早くはない。キャリアの初期は苦労人だった。
高校生で俳優への道を志望。ロサンゼルスでバーテンダーなどをしながら俳優学校に通い、約10年間で数百回もの舞台オーディションに挑んだというが、合格したのはそのうちの約30作品で、ほとんどはノーギャラだったという。
長編映画への初出演は1994年。地道にキャリアを積み、2000年の『ユー・キャン・カウント・オン・ミー』で演じたローラ・リニーの弟役が評価されてモントリオール国際映画祭男優賞を受賞。その以後は、マイケル・マン監督『コラテラル』(2004)、デヴィッド・フィンチャー監督『ゾディアック』(2006)、マーティン・スコセッシ監督『シャッター アイランド』(2010)と話題作に出演するようになり、『キッズ・オールライト』の受賞につながっていく。
そして『アベンジャーズ』での大ブレイク後も、大作ではないが質の高い映画への参加が多く続く。『フォックスキャッチャー』(2014)と『スポットライト 世紀のスクープ』(2015)で、2年連続でアカデミー賞助演男優賞にノミネート。アベンジャーズ以前も以後も、進む道が変わっていないのだ。
では私生活はどうなのかというと、大ブレイク以前の2000年に女優サンライズ・コイグニーと結婚、2001年に息子キーンが誕生。すぐ後の2002年に聴神経腫瘍を患い、良性だったものの数か月間、顔面の一部に麻痺が残る苦しい時期があった。一家はそれを乗り越えて、2005年に娘ベラ、2007年に娘オデットが誕生。しかし、2008年には美容師をしていた弟スコット・ラファロの事故死という事件も起きた。ただ、これらの出来事はすべて『アベンジャーズ』参加前に起きたことで、先日のロサンゼルスにおける『アベンジャーズ/エンドゲーム 』のプレミアには一家揃って参加し、家族仲の良さを披露している。
ちなみにアイアンマン役のダウニー・Jrとは、『ゾディアック』で共演して親しくなった間柄。ハルク役をオファーされた時には自信がなく、ダウニー・Jrに電話し「大丈夫だ、相棒。僕がついている」と言われて出演したという。『エンドゲーム』の後も、新作が続々。すでにトッド・ヘインズ監督の新作への出演が決定していて、テレビシリーズ「I Know This Much Is True」では普通の男とパラノイアの双生児という難しい兄弟の関係を2役で演じることも決定ずみ。また、実在のニュースキャスター、ウォルター・クロンカイトを描く『ニュース・フラッシュ(原題) / Newsflash』への出演も噂されている。今後も『アベンジャーズ』以前と変わらず、演技派俳優の道を着実に歩んでいきそうだ。(平沢薫)