グザヴィエ・ドラン「母親&ゲイ」がテーマと言われることに違和感
第72回カンヌ国際映画祭
現地時間23日、第72回カンヌ国際映画祭でコンペティション部門に出品されている映画『マティアス・アンド・マキシム(英題) / Matthias And Maxime』の公式会見が行われ、主演・監督・脚本・編集・製作を務めたグザヴィエ・ドラン(『たかが世界の終わり』『Mommy/マミー』)が出席し、友情がテーマという本作について語った。
物語は、幼なじみで親友同士のマティアスとマキシム(ドラン)の関係が、頼まれて出演した学生映画でキスシーンを演じたことから不確かなものになるさまを描いた本作。弱冠20歳でカンヌでの鮮烈なデビューを飾ったドランも30歳に。「もちろんそれまでにも友達はいたけど、20代後半でグループでの友情というものを知った」という彼が、友人グループのエネルギーに満ち満ちた会話とともに、友情の強さを描いている。
常に新しいテーマを掘り下げたいと思っているというドランは、「多くの人が僕に『あなたの映画のテーマは母親とホモセクシュアリティですね』って言ってくるけど、母親は誰にもいるじゃないか。誰もが母親から生まれたわけだ。母親、女性は独自の強さや問題を抱えていて、映画の中で掘り下げるのは素晴らしい人物」と母親との関係が彼の作品群のテーマと言われることに違和感を抱いている様子。「この映画はゲイについてではなく、人生について描いている。ところで、僕たちは“ヘテロセクシュアル映画”というくくりはしないよね。『素晴らしいヘテロセクシュアルのラブストーリーを観たんだ』とは言わない」とクルクル表情を変えながらちゃめっ気たっぷりに指摘する。
「僕にとっては、これはホモセクシュアリティについての映画ではないし、ゲイの愛についての映画でもない。もちろん、その要素はある。だけど主人公の二人が、これがゲイの愛だと気付いるとは思わない。ただの愛だ。25年にわたって兄弟同然の親友だったのに、ある日、愛がドアをたたく。あのキスでね。オープニングでのキスが全てを揺さぶり、二人の関係が再定義されることになる。僕にとって、これは第一に友情についての映画なんだ。友情は愛よりも確かで、強いものなのか? 友情は愛なのか? それがこの映画で僕が提示したものだ」と説明していた。(編集部・市川遥)
第72回カンヌ国際映画祭は現地時間5月25日まで開催