ベン・ウィショー新作に日本人作曲家の音楽!
第72回カンヌ国際映画祭
現在開催中の第72回カンヌ国際映画祭で、コンペティション部門に出品されている映画『リトル・ジョー(原題) / Little Joe』には日本人作曲家・伊藤貞司さん(1982年死去)の音楽が使われている。公式会見に出席したジェシカ・ハウスナー監督(『ルルドの泉で』など)が、その理由を明かした。
『リトル・ジョー(原題)』は、新種の花の開発に取り組む上級ブリーダーでシングルマザーのアリス(エミリー・ビーチャム)が、同僚のクリス(ベン・ウィショー)らと共に“人を幸せにする花”を生み出すところからスタート。しかし副作用があったようで、その花の花粉を吸ったクリスも、アリスの息子ジョーも、すっかり別人のようになってしまう……。不気味なほど鮮やかなビジュアルに静的なカメラワーク、そして日本的かつ前衛的な伊藤さんの音楽が、不穏な空気を高めていくのに一役買っている。
伊藤さんのことは長年知っていたというハウスナー監督は、「彼はマヤ・デレン(アメリカの前衛映画作家。1961年に亡くなるまで伊藤さんと結婚していた)の映画の音楽を担当していたから。わたしは彼女の映画が好きで、映画のスタイルにおいて彼女の影響を受けている」とコメント。「テイジ・イトーの音楽は、とても奇妙なフィーリングを与えてくれる。この映画にはそれが必要だった。サスペンスの引き金になると同時に、一体どんな映画かわからないという雰囲気をもたらしてくれるの」と音楽の重要性を語った。
奇妙なおとぎ話のような本作だが、掘り下げていくのは母親業と仕事の板挟みになっている女性のリアルな内面だ。ハウスナー監督は「少なくとも(母国である)オーストリア、そしてドイツでは、こうしたことはまだタブーのトピックで、母親は子供をずっと愛すものとみなされている。それは多分その通りなのだろうけど、時には違うこともあると思う。わたしは母親についての物語を語りたかった。子供のことをとても愛しているけれど、同時に仕事もとても愛している母親の物語を」と説明していた。(編集部・市川遥)
第72回カンヌ国際映画祭は現地時間5月25日まで開催