釜山・アジア映画人賞に是枝裕和監督選出の理由
今年で24回目を迎える釜山国際映画祭の公式記者会見が4日、ソウル市内で開催され、イ・ヨングァン理事長、チョン・ヤンジュン執行委員長、チャ・スンジェアジアフィルムマーケット共同運営委員長が登壇し、映画祭の概要を発表。オープニング作品は、森山未來が全編カザフ語に挑んだ日本・カザフスタン合作映画『オルジャスの白い馬』(エルラン・ヌルムハンベトフ、竹葉リサの共同監督)に、クロージング作品は、北海道・小樽で撮影された韓国映画『ムーンリット・ウインター(英題)/ Moonlit Winter』(イム・デヒョン監督)に決定した。
チョン執行委員長は、オープニング作品の『オルジャスの白い馬』を、「ハリウッド全盛時代の西部劇を観ているかのような優れた作品。映画の製作環境は恵まれているわけではないが、カザフスタンから秀作が続々と生まれている」と評し、カザフスタンは中央アジア映画界の中心になりつつあると言及した。
時局を反映してか、記者からは日本映画の上映に関する質問も。Gala Presentation部門に『真実』を出品し、今年の「Asian Filmmaker of the Year」(アジア映画人賞)に選定された是枝裕和監督について、チョン委員長は「本来は昨年授与するつもりであったが『真実』の撮影準備のため叶わず、今年になっただけであり、彼がこれまで撮った作品の素晴らしさと映画への貢献を評価したもの」と説明し、政治思想とは関係がないことを強調した。
また、昨年は映画祭スタッフの労働環境が指摘されただけでなく、チョン執行委員長との不仲もささやかれたイ理事長だが、「組織の改革がうまくゆき、昨年指摘された多くの問題は解決された。チョン委員長とは夫婦仲みたいなものでいろいろあるが、映画祭の運営にはまったく支障がない」と説明し、今年は昨年以上の観客動員数を達成するだろうと予測。
今年から海雲台(ヘウンデ)ビーチで行ってきたイベントの会場をフィルムセンターに移すことについては「映画の殿堂と映画祭の組織を合併させる新たな定款を準備している。これだけ大きな建造物を維持するためには市民にアピールし、映画祭以外でも利用してもらう必要があり、これは映画祭予算の独立も視野に入れた事案」と説明し、将来的には行政からの財政支援に頼らない方向へ舵を切るとした。
85か国303(内ワールドプレミアは150本)の作品が上映される本映画祭は、10月3日から12日まで釜山市センタムシティと南浦洞(ナンポドン)一帯で開催される。(取材・文:土田真樹)