PFFグランプリは中尾広道監督『おばけ』!入選監督最年長の39歳
「第41回ぴあフィルムフェスティバル(PFF)」のコンペティション部門「PFF アワード 2019」表彰式が20日、国立映画アーカイブで行われ、中尾広道監督の『おばけ』がグランプリに輝いた。この日は、18名の入選監督たちをはじめ、最終審査員を務めた白石和彌監督、西川朝子プロデューサー、写真家の野村佐紀子、山下敦弘監督が出席。同じく審査員を務めた俳優・映画監督の斎藤工は、仕事の関係でビデオ出演となった。
映画祭のメインプログラムである「PFF アワード」。今年は応募総数495本のなかから、一人で自主映画を製作する男の思いをロマンチックに描いた『おばけ』がグランプリを受賞した。作品を手掛けた中尾監督は39歳(作品応募時)と、入選作品の監督のなかでは最年長だが「魂を削り、いまの自分にできることは全部やった」と語ると、グランプリ発表まで自分の名前が呼ばれなかったことに「もし賞をもらえなかったら服を脱いで暴れてやろうかと思った」とユーモアを交えてコメント。「こんなに素晴らしい賞をもらえて、いままでやってきたことを肯定してもらえた気分」と感無量の表情だった。
最終審査員の白石監督は、「(グランプリ受賞は)満場一致でした」とぶっちぎりの高評価だったことを明らかにしつつも、「ほかの映画と違い過ぎて大丈夫かと思ったぐらい」と物議を醸したことも素直に打ち明ける。それでも、「小説や漫画などでは表現しきれない映画。監督としてアドバイスできることはないです。一つ言えるとすれば、中尾監督は映画に愛されていると思います」と評価した。
続けて白石監督は、「僕はいまでこそ映画監督をやっていますが、自主映画を撮ったことがない。思い立った衝動だけで、映画を作って応募するだけで尊敬します」と入選監督たちに敬意を表し、「初めて審査員をやらせてもらいましたが、作った人と僕との喧嘩だと思いながら作品を観ました」と強い思いで審査に挑んだことを明かす。さらに「非オフィシャルで僕も自主映画を撮りたくなるような思いになった夏でした」と感謝を述べた。
また、ビデオメッセージを寄せた斎藤は「とても貴重な経験でした」と切り出し「今回応募された1本だけでは判断できないかもしれませんが、未来が見えたり、過去の作品を観たいと思える作家たちでした。いまはメイドインジャパンが世界と戦っていく時代。世界に誇れる映画が5本選ばれたと思います。僕も自分の足元を見て、何が強みなのかを考え、フィルムメーカーとして海外でも戦える映画は何かを考えていきたい」と熱い思いを語っていた。(磯部正和)
受賞作品一覧は下記の通り。
【グランプリ】
『おばけ』 中尾広道監督
【準グランプリ】
『雨のやむとき』 山口優衣監督
【審査員特別賞】
『きえてたまるか』 清水啓吾監督
『くじらの湯』 キヤマミズキ監督
『ビューティフル、グッバイ』 今村瑛一監督
【ひかりTV賞】
『アボカドの固さ』 城真也監督
【観客賞】
『OLD DAYS』 末松暢茂監督
【映画ファン賞(ぴあニスト賞)】
『東京少女』 橋本根大監督
【ジェムストーン賞(日活賞)】
『スーパーミキンコリニスタ』 草場尚也監督
【エンタテインメント賞(ホリプロ賞)】
『スーパーミキンコリニスタ』 草場尚也監督