佐野勇斗、M!LKがなければつぶれていた
3月11日に3枚目のコンセプトフルアルバム「Juvenilizm-青春主義-」を発売するボーカルダンスユニットM!LK。同時に、3月7日から15日まで期間限定で、メンバーたちそれぞれがアルバム収録曲をモチーフにしたストーリーで主演を務める『Juvenilizm-青春主義- Special Short Film』が劇場公開される。M!LKのおちゃらけキュンキュン王子こと佐野勇斗が、作品に込めた思いや、1月いっぱいで板垣瑞生と宮世琉弥が卒業し、5人体制になり新たな再スタートを切るグループへの思いなどを語った。
ニューアルバムについて「いつもははっちゃけたキャッチーな感じの曲調が多かったのですが、今回は歌詞も含めてメッセージ性の強いものになっています。1曲目から最後まで通して聴いていただけると、すごく響く作品になっていると思いますし、5人体制となった決意が見えるアルバムになっています」と紹介した佐野。
“5人体制となった決意”という言葉を使った佐野だが「でもアルバムのなかには7人体制だったときの瑞生と琉弥の曲も入っているんです。普通だと新しいアルバムに、卒業したメンバーが参加している曲は入れませんよね。そこにもM!LKというグループの特徴というか、彼らがいた歴史の上にいまがあるという意図が感じられると思います」と熱い胸の内を明かす。
そんなアルバムのメッセージ性と連動するようなストーリーがショートフィルムとなった。佐野は「君がくれた宝物ならココにある」というタイトルの物語で、美容師になる夢を叶えたものの、思い通りにはいかず、現実と理想のはざまに悩む青年を演じた。「僕自身、高校を卒業して上京し、ドラマなどに出させていただくようになったとき、怒られることもたくさんあったので、当時の自分を思い出しながら演じていました。ちょうど僕はいま大学4年生の年で、同学年だと就活している人もいるので、感情移入してもらえる話になっているのかなと思っています」
M!LKでの活動と並行し、佐野は俳優業も精力的に行っている。出演作も続き、主演映画も公開されるなど順調な活動に思われるが「最近、壁にぶち当たることが多いんです」と真情を吐露する。「デビュー当時はわからないことも多く、ただがむしゃらに頑張るしかなかったのですが、20歳を過ぎてこの世界にも慣れ周囲が見えてくると、焦りも出てくるし、いまのままで大丈夫なのかなという不安もある。その意味で、僕の話だけではなく、(今回の)メンバー全員のストーリーに共感できました」と他のメンバーの物語にも強く感情移入したという。
「君がくれた宝物ならココにある」では、壁にぶち当たったとき、仲間から贈られたハサミが大きな心の支えになった。「僕にとってのハサミがM!LKなんです。いまは個人で俳優の仕事をやらせてもらうことも多いですが、M!LKがあるから頑張れるところがあるんです。僕は事務所に入ったばかりのとき、何もわからないなか、当時はM!LKという名前ではなかったのですが、グループが僕を拾ってくれて育ててくれたからこそいまがある。常に何かの形でグループに恩返ししたいというのが大きなモチベーションになっているんです」と明かす。
どれだけ映画やドラマの撮影で疲れていても、メンバーたちと会えば活力がみなぎる。その存在は、家族でもなければ友達でもない。でも一緒にいるだけで前に進む力になる。佐野は「もしM!LKがなければ、僕はつぶれてしまっていたと思います」と話すと「愛は深いし人生を共にするメンバー。とても大切な存在です」と感謝を述べる。
前述したように、大切な存在のメンバーたちが主演を務めるショートストーリーが、渋谷HUMAXシネマにて期間限定上映される。「不思議な気持ちですね」と笑顔を見せると「ファンから『M!LKと芝居のどちらか好きですか?』と聞かれることが多いのですが、今回はM!LKと芝居が重なった感じ。メンバーと芝居をするのは、恥ずかしい気持ちなのですが、より多くの人にM!LKの良さを知ってもらえたら嬉しい」
今回のアルバムリードソング「Winding Road」に「10年後の僕へ 君は今何をしてますか」という歌詞がある。「こうなりたいという未来へのイメージは明確にあるのですが、自分の思い描く人間になるために大切なのは“いま”をどう過ごすか。とにかくいまできることを全力でやっていれば、いつか結果はついてくる」と語った佐野。
M!LKも俳優業も全力投球という姿勢は、デビュー当時から変わらない。1月末に卒業した板垣から「お前はいつでも佐野勇斗だよね」と言われた言葉が胸に残っているそう。「年を重ねると変わらなければいけないのかもしれませんが、変わらないことも難しいことなのかなと思うんです。だからいつまでも変わらないように頑張ろうと思っています」
変わらないまま居続けること。そんな挑戦を掲げた佐野の今後がとても楽しみだ。(取材・文・撮影:磯部正和)