塚本晋也『野火』戦後75年のアンコール上映決定
『鉄男』(1989)、『斬、』(2018)などで世界的な評価を受ける塚本晋也監督が、戦後70年にあたる2015年に発表した『野火』が、戦後75年を迎える今年も、8月15日の終戦記念日を中心に、全国各地でアンコール上映されることが決定した。
『野火』は、作家・大岡昇平が1951年に発表した同名小説が原作の戦争映画。第2次世界大戦末期のフィリピン・レイテ島で、肺病で部隊を追われた日本兵が、暑さと飢餓による極限状態のなかで体験する、むごたらしい戦争の現実を描き出す。
構想20年の末に、塚本監督が監督・主演・製作・撮影・編集を一人で務めて完成させた渾身の一作となり、2014年にベネチア国際映画祭メインコンペティション部門にも出品。「毎年終戦記念日に上映されるような映画にしたい」という塚本監督の思いに共感した劇場の協力で、毎年夏にアンコール上映を重ねてきた。
今年も、渋谷・ユーロスペースを中心に全国32館で上映が決定。(7月10日現在)。ユーロスペースと新文芸座の都内2館で塚本監督のトークイベントを実施するほか、現状を受けて、東京都外の劇場とはオンラインによるリモートトークの開催を予定している(一部劇場を除く)。各劇場のリモートトーク実施の有無、日時などの詳細は劇場サイトや、『野火』オフィシャルサイト、SNSにて随時発表される。(編集部・入倉功一)
塚本晋也監督のコメントは以下の通り
戦後70年に公開した『野火』。今年で6年目の上映になりますが、
毎年終戦記念日を中心に多くの劇場で上映してくださっています。
今年は戦後75年。他界された大林宣彦監督が言い残されたように、
戦後70年のときに感じた世の中への不安はますます大きくなっていくばかりです。
大林監督によると、今はすでに戦前かもしれないのです。
ぜひ『野火』を劇場の臨場感で体験していただき、
ひとりひとりが戦争という極限の虚無に近づかないよう、これからのことを考えていただけたら、と思います。
塚本晋也