『2分の1の魔法』涙のラストはこうして作られた!監督インタビュー
ディズニー&ピクサー映画『2分の1の魔法』(公開中)の涙腺を刺激するエンディングはどのようして作られたのか、ダン・スキャンロン監督が語った。(ラストに触れているので鑑賞後にお読みください)
技術の進歩によって魔法が消えかけたファンタジーの世界を舞台に、自分が生まれる前に亡くなった父に「一度でいいから会いたい」と願う内気な主人公イアンが、陽気な魔法オタクの兄バーリーと共に、父をよみがえらせるための冒険に出るさまを描いた本作。自身も1歳の時に父親を亡くし(兄が3歳の時)、父についての記憶がないスキャンロン監督の実体験が基になっている。
本作の“意外なエンディング”は制作のかなり早い段階から決めており、そこにどう至らせるかが重要だったとスキャンロン監督は言う。「最初からどういうエンディングになるかがわかっていたのは、とてもラッキーだった。難しかったのは、映画に正しいストーリーを与えることだ。そうしたストーリーがあって初めて、そのエンディングはとても感動的で、避けられないものでありながらも、驚きが感じられるものになるだろうから」
中でも力を入れたのが、最初に兄バーリーをどのように登場させるかという点だった。実際、制作の終盤近くになってから、映画の冒頭をやり直したという。一見、空気が読めず破天荒なバーリーだが、注目して観ると、彼がいかに弟のイアンを守っていたのかに気付かされ、余計に泣けてしまうはずだ。
「観客が映画を初めて観た時、バーリーはどこかイアンにとってトラブルメーカーで、失敗してばかりの人だと思ってほしかったんだ。イアンにとって、問題を解決してくれる人である以上に、問題を引き起こす人だとね。でもそれと同時に、僕らは気を付けないといけなかった。なぜなら、映画の最後には、観客がバーリーについて思い返した時、彼が実際には出来る限りイアンを助けようとしていたことや、無理をしてまでイアンを支えようとしていたことをわかってほしかったから。その行動がいつも成功しているわけではなかったとしても」
「重要なのはバーリーの意図で、それはとても純粋で、愛情にあふれていて、優しいんだ。エンディングのネタバレにならずに、映画全体の流れを通してそうした道筋を進んでいくのは難しかった。でもそれが、本作において僕らが目指したものだった。僕らは常に、バーリーがイアンを助けようとしていて、その彼の手助けが大抵は問題につながるように気を配っていた。そして少し話を複雑にするために、問題が起きるのは必ずしもバーリーのせいだけというわけではない、というのも見せようとした。もしイアンがバーリーの提案にオープンだったら、もしイアンがバーリーに対して正直だったら、物事は多分もっと良くなっていただろう。でもイアンはいつも兄から逃げようとしたり、兄が言ったことと反対のことをしたり、兄の存在を隠したり、兄のようにならないようにしたり、彼の言うことに耳を傾けない。そうした行動によって問題が起こるんだ」
兄弟愛にあふれた本作は、スキャンロン監督から実兄へのラブレターのようにも思われる。果たして、映画を観たお兄さんの感想は?「優しい兄だからとても気に入ってくれたよ。実際、彼はすごくバーリーみたいなんだ。僕のことを常に支えてくれていて、映画にとても感動してくれた。この映画をすでに映画館で7回以上観ているんだ! そのことにはすごく驚いたね」
「兄と僕は今、お互いに対してや、母への思いをとてもオープンに話すんだ。そうしたことは、兄弟関係を一層より良いものにしてくれた。これは、映画を観た人たちに覚えていてほしい重要なことだと思う。家族に自分がどう感じているかを語るんだ。家族を愛していると語るんだ。本作はまだ生きている人たちについての映画で、彼らが生きている間に自分が感じていることをしっかりと伝えることの大切さを描いている。人々が映画を観て、大切な人に思いを伝えてくれることを期待しているよ」(編集部・市川遥)
映画『2分の1の魔法』は公開中