アカデミー賞、作品賞候補に性別・人種の多様性求める 2024年から新基準
米アカデミー賞を主催する映画芸術科学アカデミーは現地時間9月8日、2024年の第96回アカデミー賞から、作品賞部門へのノミネート資格を得るために必要となる、多様性を重視した新たな基準を発表した。
新基準では、映画のキャストに、アジア系やラテン系、黒人など多様な人種を配役することや、技術部門の主要ポストなどに、女性、少数派の人種・民族集団、LGBTQ+、障がい者が就いていることなどを定めている。
同アカデミーでは、「白すぎるオスカー」が波紋を呼んだ2016年に、有色人種と女性の会員数を2020年までにそれぞれ2倍にすることを目標にした変革を発表し、今年6月の新メンバー追加で目標をクリア。今年開催された第92回アカデミー賞では、韓国映画の『パラサイト 半地下の家族』が作品賞に選ばれるなど、多様な人々が集まる団体へのシフトが進んでいる。今回の基準について協会では「映画を観に行く人々の多様性をより良く反映させるため、スクリーン内においても、また外においても、公正な表現を奨励しようと定められたものです」としている。
2024年のアカデミー賞では、A・B・C・Dの4つの基準のうち、2つを満たしていなければ作品賞の対象とならないとしている。基準の一部は以下の通り。(西村重人)
基準Aを達成するには、以下のうち1つを満たしていなければならない。
A1.主演または助演
少なくとも1名が、アジア系、ヒスパニック/ラテン系、黒人/アフリカ系アメリカ人、先住民族/ネイティブアメリカン/アラスカ先住民、中東・北アフリカ、ハワイ先住民またはその他の太平洋諸島出身者、その他の少数派民族・人種であること。
A2.アンサンブルキャスト
脇役・端役の少なくとも30%は、女性、少数派民族・人種、LGBTQ+、認知・身体障害のある方、耳の聞こえない方、難聴の方のうち、少なくとも2つのグループの俳優であること。
A3. メインストーリー/内容
映画のメインストーリー、テーマ、物語の中心が、女性、少数派民族・人種、LGBTQ+、認知・身体障害のある方、耳の聞こえない方、難聴の方のグループ(複数)であること。
基準Bを達成するためには、以下の基準のうち1つを満たしていなければならない。
B1. クリエイティブリーダーと部門長
以下のクリエイティブリーダー職および部門長(キャスティングディレクター、撮影監督、作曲家、衣装デザイナー、ディレクター、編集、ヘアスタイリスト、メイクアップアーティスト、プロデューサー、美術、装飾、音響、VFXスーパーバイザー、ライター)のうち、少なくとも2名が、女性、少数派民族・人種、LGBTQ+、認知・身体障がいのある方、耳の聞こえない方、難聴の方であること。
これらのうち少なくとも1つのポジションに、アジア系、ヒスパニック/ラテン系、黒人/アフリカ系アメリカ人、先住民族/ネイティブアメリカン/アラスカ先住民、中東・北アフリカ、ハワイ先住民またはその他の太平洋諸島出身者、その他の少数派民族・人種がついていること。
B2. その他の役割
少なくとも6人のクルー/チームおよび技術職(プロダクションアシスタントを除く)は、少数派の人種または民族の出身者であること。ポジションには、ファーストAD、照明技術者、スクリプターなどが含まれるが、限定されるものではない。
B3. クルー全体の構成
スタッフのうち、少なくとも30%は、不特定多数の女性、少数派民族・人種、LGBTQ+、認知・身体障がいのある方、耳の聞こえない方、難聴の方であること。
基準Cを達成するためには、以下の両方の基準を満たしていなければならない。
C1. 有給の実習やインターンシップ
映画の配給会社または資金調達会社が、女性、少数派民族・人種、LGBTQ+、認知・身体障がいのある方、耳の聞こえない方、難聴の方を、有給の実習生やインターンを雇っていること。
C2. 職業訓練・能力開発
映画の制作スタジオ、配給、融資会社は、女性、少数派民族・人種、LGBTQ+、認知・身体障がいのある方、耳の聞こえない方、難聴の方にトレーニングや職業機会を与える。
基準Dを達成するためには、フィルムは以下の基準を満たさなければならない。
D1. マーケティング、宣伝、配給における表現
スタジオ、映画会社のマーケティング、広報、配給チームの上級幹部に、人種・民族を含む少数派グループが配されている。