波瑠「役者としてもっと面白くなる」20代最後の年に出会った役
直木賞受賞作を実写化した映画『ホテルローヤル』で主演を務めた波瑠。20代最後の年を迎えて挑んだ本作で「こういう役ができるようになったらもっと面白くなる」と感じたという波瑠が、役者としての素直な思いを明かした。
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桜木紫乃による同名の連作短編集を映画化した本作は、北海道の湿原を背に立つラブホテル「ホテルローヤル」が舞台のヒューマンドラマ。ホテルを訪れる男女や従業員など、それぞれに事情を抱えた人々が織りなす人間模様が描き出される。主人公である経営者の一人娘・田中雅代を演じた波瑠は「私が演じる雅代という女の子はほとんど何も発することなく、静かにたたずんで状況を見守っているようなキャラクター。セリフも多い方ではなかったですし、できるかなという不安はありました」と振り返る。
実際、台本のセリフも「……」が多く、静かなたたずまいを要求される役どころ。放送中のドラマ「#リモラブ~普通の恋は邪道~」も好調な波瑠だが、本作では「最近やっている役の中では珍しい役かもしれない」と感じたという。「ドラマだと何もしていないことがどうしても不安になることがあるのですが、今回はどこまでそぎ落とせるのだろうかと、引き算するようなお芝居でした。突き詰めていったら面白いかもしれないと思いながら、黙って立っているだけで芝居になるのだろうかと。こういう役ができるようになったら役者としてももっと面白くなるだろうな」と思うところも多かったようだ。
2015年、連続テレビ小説「あさが来た」でヒロインに抜てきされて以来、お茶の間にも広く知られるようになった波瑠。29歳になった現在に至るまでキャリアは順調で、主演を務める機会が増えているが、本人にとっては浮ついた感じはないという。「私は演じる人として撮影の現場に立っているだけで、時には自分の親ぐらいの年齢の人たちとコミュニケーションをとりながら、一つの作品を作っていくわけです。その中で自分たちの作る作品やお芝居の正解に少しずつ近づいていく。自分も作品作りに参加していきたいと思う自覚は前より出てきました」と心境の変化を明かす。
そんな彼女のたたずまいも非常に穏やかで、それでいて芯の強さを感じさせる。「しっかりしている」という言葉を寄せられることもあるようだが、それには「きっと心が老けているんだと思います」と笑う。「朝ドラでは娘ができて孫を見て……ということをやっていたら、自分がすごいおばあちゃんになったような気になって。その感覚を知ってからは、なんだか私は20代をはるかに飛び越えて、おばあちゃんじゃないかと思う瞬間も時々あるんです」と冗談めかす。
「29歳なので、もちろん20代最後の年だという気持ちはあるんです。でも、だからといって何も変わっていない。昔から好きなものも嫌いなものもあまり変わっていないですし、きっとこれから30代になっても変わらずにいるような気がします」
「#リモラブ」では、完璧主義だが恋には不器用な産業医を演じている。「『#リモラブ』はめまぐるしい要素が展開していくドラマなので、別ものとして観ていただければ」と笑いつつ「私は考え事が大好きなので、自分の得意な役って何だろうと探し出すのが面白いんです。やっぱり役者である以上、いろんな役をやってみたいなと思いますし、だからこそ自分が苦手な役にも挑戦したいと思う。そういう楽しさがあるんだと思うようになりました」と真っすぐな眼差しで語った。(取材・文:壬生智裕)
映画『ホテルローヤル』は全国公開中