佐野史郎、林海象監督との新作に映画デビュー作『夢みるように眠りたい』重ねる
俳優の佐野史郎が2日、都内で行われた映画『BOLT』(12月11日公開)の外国特派員協会記者会見に林海象監督と出席。1986年のスクリーンデビュー作『夢みるように眠りたい』をはじめ、30年以上にわたって度々組んできた林監督との撮影を振り返った。
本作は大地震に見舞われた原子力発電所で起こった非常事態に、男と仲間たちが立ち向かうさまを描く人間ドラマ。林監督の7年ぶりの新作でもあり、「BOLT」「LIFE」「GOOD YEAR」の三つのエピソードで構成されている。主演は、探偵映画「濱マイク」シリーズなどで林監督と度々組んできた永瀬正敏。佐野、金山一彦、後藤ひろひと、大西信満、堀内正美、月船さららが脇を固めるほか、佐藤浩市が声の出演をしている。
佐野は林監督とのタッグについて問われると、「10本以上ご一緒していますが、この作品は一番最初の『夢みるように眠りたい』の時に近かったと思います」とコメント。「撮影監督のカメラマンが長田勇市さんで同じだったということもありますし、セリフが少なく、サイレント映画の要素もあって、そこもなんとなく似ていたなって」と続ける。
撮影は、現代美術家のヤノベケンジが香川・高松市美術館に創り上げた巨大オブジェの中で行われたが、美術館での撮影についても興味深かったといい「楽しかったです」と嬉しそうに述懐。撮影中とは知らず、オブジェを見に来た来場者を前に演技をすることもあり「『夢みるように眠りたい』の時も古い日本の建築物がたくさん映っていて、それが人間と同じくらい重要な存在だった。今回も美術が、人間と同じくらい、またそれ以上に重要で、俳優も美術と同じくらい互角に映っていないといけない。物として展示物と並んで来場者に見てもらいながら撮る行為は楽しくもあったけど、(そういう意味で)厳しい撮影でもありました」と振り返った。
林監督の「映画は若い人と作るもの」という考えから、本作には16歳くらいの学生たちもスタッフとして撮影に参加している。林監督は助手としてでなく、しっかりと持ち場を与え、一スタッフとして責任ある仕事を任せたことを説明し「若い人に助けてもらった」と振り返ると、佐野にとってもこの学生たちとの撮影は印象深かったとのこと。「学生ですけど、撮影現場はすごくプロフェッショナル。それを強く感じました」とその働きぶりを絶賛していた。
佐野は俳優として活躍する一方で昨年7月に怪談えほん「まどのそと」を手掛けたが、その活動に興味を持つ海外記者から今後の予定について質問が。佐野によれば「新しい怪談を自分で積極的に作ることはない。オファーがあれば作りますが」と今は創作に力を入れていない様子だが、「怪談はラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の日本語での朗読をずっとしていて、アメリカへ行ったりもしているんです」と怪談に対する強い興味をうかがわせる。
ラフカディオ・ハーン作品に惹かれる理由を「ラフカディオ・ハーンも江戸時代の津波の話を書いていたりして、東日本大震災の後には彼の津波の話を朗読したりもしました。必ず訪れてくる災害。それは自然災害だけど、それに対して人がどう判断して生きていくか、その知恵のようなものが怪談の中にもいろいろあるなと感じているんです」と説明していた。(取材・文:名鹿祥史)
映画『BOLT』は12月11日よりテアトル新宿ほか全国順次公開