のん、うぬぼれることは大事 アラサーの不安に持論
芥川賞作家・綿矢りさの小説を映画化した『私をくいとめて』(公開中)で、6年ぶりに実写長編映画で主人公を演じたのん。劇中でアラサー女性の不安、戸惑いを何とも豊かに表現している彼女だが、27歳となったのん自身も「結婚ってどういう人とするのがいいんだろう?」とその世代ならではの妄想を繰り広げることがあるのだとか。その一方、仕事については「慌ててはいない」とにっこり。「ちょっと自分にうぬぼれてみるといいことがある気がしている」と、のん流のアラサー街道の歩み方を教えてくれた。
2017年公開のヒット作『勝手にふるえてろ』に続いて綿矢りさの小説を大九明子監督が映画化した本作。おひとりさまライフに慣れすぎて、脳内に“A”と呼ぶ相談役が爆誕した、31歳の女性・みつ子(のん)の不器用な恋を描く。恋の相手を林遣都、親友役をのんとは朝ドラ以来の共演となった橋本愛が演じていることも話題だ。
自分だけの部屋、ひとりでの食事、カフェめぐりも満喫。おひとりさまが快適だけれど、結婚、妊娠した親友を祝福しつつもさみしさを抱えたり、恋も人間関係も一歩踏み出すことが恐ろしくなってしまったり……同世代にとっては、みつ子のモヤモヤとした思いは共感度満点。のんもアラサーとなり、周囲で結婚・出産をする知人が増えたそうで、「わたしも結婚ってどんなものなんだろうって、考えたりします。結婚願望と言えるものはあるんですが、その前段階というか、結婚ってどういう人とするのがいいんだろう? と夢みたいなことを考えたりしています」と微笑む。
実際、結婚やキャリアにおいて「30歳までに」と焦りを感じる人も多いはずだ。しかしのん自身は、女優という仕事に関して「慌てている感じはありません」と語る。「ありがたいことに、桃井かおりさんや、矢野顕子さんなどステキな大人の方たちとご一緒する機会があって。ものすごく憧れます」とむしろ年齢を重ねることに楽しみを見出しているという。
もし「不安を払拭したい」という同世代の人がいたら、なんと声をかけるだろうか? のんが提案したのは「うぬぼれることって、結構いいんじゃないかと思っています」という意表をつくもの。「うぬぼれることは、ダメなことだと思われがちですよね。でもダメだと思うことを一度やめてみて、ちょっと自分にうぬぼれてみるといいことがある気がします」と持論を明かし、「わたしはとてもうぬぼれ屋です」と笑顔で告白。「理想を高く持っていると、実際の自分に落胆してしまうこともあります。でもその一方で、過剰な自信があることで、もっとできるはずだと、いろいろなことを楽しく乗り越えていける気がしています」と“正しく自信過剰であること”が必要だと話す。
本作は、第33回東京国際映画祭「TOKYOプレミア2020」部門の観客賞を受賞。受賞後の記者会見では「女優のお仕事が大好き。ここに一生いたい。これは自分の生きる術」だと熱っぽく語っていたのん。年齢を重ねることも楽しみだという彼女だが、「桃井かおりさんは、『役者は自分のイヤなところ、弱いところも使える仕事。それって美味しいよね』とおっしゃっていて。わたしはそれに、ものすごく共感したんです。女優業は失敗しても、落ち込んでも、それを生かすことができる仕事。そう考えると気持ちが上向きになるし、『ああ、このお仕事があってよかった!』と思っています」と意欲は増すばかり。「うぬぼれ屋」というのんが自らの可能性にワクワクとしているように、彼女の存在がこれからもたくさんの人々の心を刺激しそうだ。(取材・文:成田おり枝)