「銀魂」杉田智和、子安武人、石田彰、15年演じる役との向き合い方とは
「週刊少年ジャンプ」で連載された空知英秋の人気漫画「銀魂」を原作にしたアニメーション映画『銀魂 THE FINAL』(公開中)。2006年のテレビアニメ放送開始から約15年、本作では原作のラストをベースにしたエピソードが描かれ、ついに完結を迎える。その物語の主軸を担う、坂田銀時役の杉田智和、高杉晋助役の子安武人、桂小太郎役の石田彰が、長年寄り添ったキャラクターとの向き合い方を明かした。
3人が演じる銀時、高杉、桂は幼少の頃、師として彼らに大きな影響を与えた人物・吉田松陽が開いた松下村塾で共に過ごした間柄。かつては仲間として攘夷戦争を戦ったもの、それぞれ別の道を歩んだ3人の生きざまは「銀魂」シリーズ全体の本筋に関わり、今回の映画ではその行く末が描かれることになる。
今や国民的人気キャラクターとなった“銀さん”の声優を15年間担当してきた杉田だが、演じる姿勢について、意識して決め込むことはしないのだとか。「自分の中で、それが踏み絵や楔みたいになると、窮屈になって演じづらくなってしまうんです。例えば、笑うシーンで『笑わなきゃ』と思って笑うのは、すごくストレスになる。だからそういう事はあまり考えないようにしています」と考えを明かす。
体調管理など最低限のことはもちろん必要と前置きしつつ、「直接関係しない事が結果として実は役に立っていたりする」とも。「それが何なのかわかれば楽なのでしょうけど、目に見えないものだったりする。それに大事なシーンでも、あえて覚悟したりすることは余計かなと思います。すでにセリフに緊張感が込められていて、それを表現できる人たちが選ばれて集まっている。であれば自然と出来上がるものだと思っています」
そして、石田は「桂はいつも大真面目である、ということが自分の中にはあります」と語る。「ギャグシーンもシリアスなシーンも、同じ真面目さで向き合っているところが構造的に面白かったり、何か見る人の心に刺さったりするんだろうなと思っています」と解釈しており、杉田とは違って事前に用意をしておかないと難しいのだとも語り、数々の人気キャラクターを演じてきた石田でさえも「いつも真面目であること、真剣であることを、同じやり方でずっと通していけばいいんでしょうけど、でもやっぱりギャグのシーンだと“面白くしなきゃ”と思ってしまうんです。そういうすけべ心をいなすことは『THE FINAL』まで来ても難しいです」と吐露する。
一方、子安が演じる高杉は、重要なキャラクターでありながらシリーズを通して登場シーンは限られているため、収録に参加するたびに毎回それまでの話を理解して、話と話の溝を埋める作業が必要だったそう。
「少しずつ高杉の立ち位置が変わっているんです。『あれ、前の時とちょっと違うなあ』と。その擦り合わせが非常に難しく、何かがあって高杉の考え方が若干変わっているのか、もともとそうあったものなのかは、僕にはわかりませんが。ただ演じる側として、なるべく前回から違和感がないようにしなければいけないし、同時にこの先変わるかもしれないことも考慮する。そういう事を軸に持ちながら演じてきました」
キャラクターに対するファンの強い思いに大きなプレッシャーを抱きながら、それを大事にもしてきたと続ける子安。映画が描く最後の展開については「まさかこの期に及んでこういう着地をするとは」と驚きながら、「端的に言えば、悪役ポジションとして登場し、再び銀時の隣で一緒に戦う同志のようになっている。受け入れられないと思われてもおかしくはないところを、そこにいて許される存在にどう昇華させるのか、すごく神経を使いました。やり過ぎるとあざとくなるし、やらな過ぎると足りない。その調整は非常に難しく、余裕はまったくありませんでした」と苦笑していた。(編集部・小山美咲)