吉沢亮、大河「青天を衝け」で新ステージへ！10年磨き抜いた実力
次世代を担う若手のトップランナーとして常に注目され、14日より放送される「青天を衝け」で、ついにNHK大河ドラマの主役に上り詰めた俳優の吉沢亮（27）。特撮ドラマ「仮面ライダーフォーゼ」で脚光を浴びてから約10年、彼は俳優として何を思考し、どんな道のりを歩んできたのか。ターニングポイントとなった作品やインタビューでの発言を振り返りながら、大河ドラマの主役に挑む吉沢の今に迫る。
吉沢が世に出るきっかけとなったのは、まぎれもなく若手俳優の登竜門・平成仮面ライダーシリーズ。仮面ライダーシリーズ生誕40周年記念作「仮面ライダーフォーゼ」（2011～2012）で2号ライダーの仮面ライダーメテオに変身する朔田流星にふんし、ある目的を胸に暗躍する二面性を持ったキャラクターを熱演した。この作品で一躍注目された吉沢は、ここから同じ仮面ライダー出身で同世代の菅田将暉、福士蒼汰、竹内涼真らとしのぎを削ることになるが、男らしさより美しさが際立つ吉沢が、まさか一番乗りで大河の主役に抜てきされるとは、この時点で誰1人予想できなかったことだろう。
その後、多彩な青春映画に次々と出演し、徐々に存在感を増していった吉沢は、2016年公開の『さらば あぶない刑事』で、更生した元ヤンキーという、これまでとはまったく毛色が異なる役に挑む。本作でインタビューをする機会を得たが、出てくる言葉は反省の弁ばかり。メガホンを取った村川透監督から「もっと芝居をやれ！」と厳しく指導され、役者として力不足だったと猛省し、柴田恭兵の「みんなでひとつのものを作っていく」という姿勢に価値観が変わったとも。周囲のプロ意識に触発されたことを強い口調で語ったその表情に、なぜか鳥肌が立つくらいゾクゾクした。何か新しい吉沢亮が生まれそうな予感がしたからだ。
2年後の2017年、その予感は的中した。『トモダチゲーム 劇場版』で再びインタビューの機会に恵まれたが、俳優としてさらにキャリアを積み重ねてきた吉沢の“化け方”がとにかく半端なかった。ある意味、美しい顔は道具と割り切り、イケメンという縛りを自らの演技で振りほどいていく、という覚悟がみなぎっているように見えた。そして、その思いを成就させたのが、コメディー映画の巨匠・福田雄一監督の爆笑2作品だ。『銀魂』では、いきなりカブトムシの着ぐるみ姿で出落ちする真選組一番隊のドS隊長・沖田総悟を、『斉木楠雄のΨ難』では、仮想の敵・ダークリユニオンと戦い続ける中二病のおバカな高校生・海藤瞬をそれぞれ怪演し、自虐的とも思える潔さで自らの殻を打ち破った。
続く『リバーズ・エッジ』では、不良にいじめられながらも抵抗しないゲイの美少年・山田一郎をどこか神々しささえ感じる佇まいで好演。その複雑な苦しみを内に秘めた表現力は、（これはあくまでも私見だが）今から思えば、NHK連続テレビ小説「なつぞら」（2019）で演じた貧しい農家の子として生まれた山田天陽役に生かされているようにも思える。画家志望でありながら、美大進学をあきらめ、苦しい実家を支える道を選んだ内なる苦悩が、まるで体中からにじみ出るような繊細さ……視聴者の胸を締め付けた儚いラストシーンは記憶に新しいことだろう。
2019年には、さらに吉沢を大きくする作品との出会いが待っていた。日本のアクション映画に革命をもたらした超大作『キングダム』だ。吉沢は、見た目は同じだが、奴隷の少年・漂と玉座を奪われた若き王・エイ政というまったく別の役どころを見事に演じ分け、演技者として高い評価を獲得し、さらに剣道2段の腕前をベースにした華麗な殺陣も披露する。ちなみに、『銀魂』の続編『銀魂2 掟は破るためにこそある』（2018）でも、1作目とは打って変わって、剣術に優れたクールな沖田の魅力がさく裂しているが、吉沢亮という俳優は、表情だけでなく、動きの中にも、何か見過ごせない魔力があると、改めて思い知らされた。
特撮ヒーローから始まった吉沢の俳優人生。アクションからコメディー、シリアスドラマまで、この10年で引き出しがいっぱいになるくらい彼のスキルは多彩になった。その集大成を大河ドラマという大きな舞台で発揮し、さらなる次のステップへ進むべき時がきた。幕末から明治へかけて、時代の大渦に翻弄されながらも、高い志で未来を切り開いた男・渋沢栄一に、吉沢はどんな命を吹き込むのか。期待で胸が膨らむばかりだ。（文：坂田正樹）