円谷プロの特撮監督が参加した幻の台湾SF映画、日本初公開
1976年に製作された中国語初のSF特撮映画『関公VSエイリアン』(チェン・ホンミン監督・台湾)デジタルリマスター版が、第16回大阪アジアン映画祭のオンライン版「大阪アジアン・オンライン座」で16日よる9時まで配信中だ。同作には1960年代のウルトラシリーズの原点「ウルトラQ」の特撮カメラマンや「ウルトラマン」の特殊技術を手掛けた円谷プロダクションの高野宏一が特撮監督として参加していて日本では未公開だった作品だけに、特撮ファンにとっても待望の日本語字幕版の誕生だ。
同作は異常現象が頻発していた香港の街に、突如、エイリアンが襲来。宇宙で核実験を繰り返す人類に警告しに来たのだ。彼らの要求は、宇宙開発の要である科学発展センターを「48時間以内に爆破せよ」。しかしこの要求を無視したことからエイリアンの怒りが爆発し、香港の街を破壊し始める。そこに颯爽(さっそう)と現れたのが、彫刻家チャオが創り上げた三国志五虎大将軍の一人、関羽の像。人智を超えた霊力を宿した関羽像は、青龍偃月刀(せいりゅうえんげつとう)を武器に人類の危機に立ち向かう。
同作の原題は『戰神』。東宝や東映での研修経験を持ち、冒険活劇を多数手がけたチェン監督の持ち味がさく裂している作品で、当時台湾で大ヒットしたという。しかし1982年の洪水で、映画会社の倉庫に保管していたフィルムが被害に。ビデオやDVDも販売されていなかったことから、映画ファンの間では「伝説のカルトSF映画」と言われていたという。
その作品に並々ならぬ関心を示したのが、「香港のクエンティン・タランティーノ」の異名を持つ映画『恋の紫煙』(2010)や『低俗喜劇』(2012)のパン・ホーチョン監督。当時のスタッフや関係者から情報を収集し、ついに2009年11月に台北郊外の倉庫に眠っていたVHSテープを発掘したのだ。パン監督は2010年に同作の版権を買い取り、デジタル修復プロジェクトに着手。晴れて2020年の中華圏のアカデミー賞こと台湾金馬奨に、新たに『關公大戰外星人』のタイトルで修復版を初披露させるに至ったという。
まさに映画マニアだから成し得た、採算度外しの今回のプロジェクト。今回の大阪アジアン・オンライン座での海外初上映は限られた期間のみだが、すでに日本の配給会社も高い関心を示しているそうで劇場での日本初公開も夢ではなさそうだ。(取材・文:中山治美)
『関公VSエイリアン』(デジタル・リマスター版)の大阪アジアン・オンライン座Theater OAFF2021での配信は16日よる9時まで。大阪アジアン・オンライン座は20日まで開催