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林遣都の惹きつけられる演技!『犬部!』で真っすぐな獣医師がハマり役

林遣都
林遣都 - (C) 2021「犬部!」製作委員会

 ドラマ「おっさんずラブ」での繊細な演技が多くの人に支持され、「姉ちゃんの恋人」や映画『私をくいとめて』とドラマでも映画でも、次なる一手が注目される存在となった林遣都。彼の最新主演作は映画『犬部!』(公開中)。ひたすら純に真っ直ぐに動物を思いながら行動する獣医師を説得力のある演技で表現している。

林遣都の魅力たっぷり!『犬部!』場面カット

 『犬部!』この簡潔にして心惹かれるタイトルの映画の原作はノンフィクション。それを『犬に名前をつける日』の山田あかねが動物愛護の現実を織り込んで脚色、篠原哲雄監督が映画化した青春映画だ。「一匹も殺したくない。生きてるものはみんな助ける!」と犬や猫を保護し、新しい飼い主を探すために“犬部”を立ち上げた獣医学生の奮闘を描く。

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 林が演じるのは、主人公の花井颯太。大の犬好きで、アパートでたくさんの保護犬と暮らす獣医学生。つまり林にとって最初のハードルは、犬にとって「この人なら自分を助けてくれる」と一瞬で信じられるような男として画面の中に存在すること。それはプロの俳優はもちろん、人間が相手とはぜんぜん違う。言い訳やごまかしはきかず、ただその心の奥底まで嘘のない、本物の犬への愛が求められる。

 映画が始まってすぐ、颯太は拾ってきた犬を自宅の浴室でキレイに洗おうとする。いきなり見知らぬ人間に拾われ、不安でいっぱいなはずの犬に対し、颯太はうれしそうに身体を密着させシャワーヘッドを手に服がびしょびしょになるのもいとわずワシワシ洗っていく。暴れて落ち着かなかった犬はすぐ気持ちよさそうに首を伸ばしてなすがまま、安心しきって身を任せている。颯太役の林は、それっぽく、というレベルを遥に超えている。ひょっとしたらもともと犬の扱いに長けていたのかもしれないが、どれだけの時間をかけたらこんなことが可能になるのだろう? 林はそんなミラクルをあっさりやってのける。

林遣都
獣医師を演じた林遣都 - (C) 2021「犬部!」製作委員会

 颯太には中川大志演じる柴崎という、同じ獣医学生の相棒がいる。大学を卒業後に颯太は動物病院を開業、柴崎は「殺処分を止めたいから」と保護動物を殺処分する動物愛護センターに勤めていた。それぞれのやり方で、けれどその実、「不幸な犬や猫をなんとかしたい」という同じ思いで行動していく。

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 彼らは若さゆえの理想主義者でもある。そんな颯太を林は、どこか飄々とした佇まいで演じている。揺るぎない理想をその中心に抱えながら行動する人であるのに人としての圧がなく、肩の力が抜けていてそのときどきを楽しむよう。動物に対してはいつでも無防備に愛情たっぷりなのに、人間が相手になると急にぶっきらぼうになり、その反動みたいに突然に深く食い込んだり。そのバランスが定まらず、妙にリアルな存在として成り立っている。そしてその塩梅にブレがない。

 そうして颯太と柴崎はその思いが純粋で切実であるからこそ、現実との折り合いのつけ方にもがく。きれいごとでは済まない動物愛護活動を通して現実と格闘し、なんとか自分の生き方を見出そうと模索する。両者の物語がうまくリンクするのは、その中心にいる林の揺るぎない芯のある演技に負うところが大きい。

 10代で出演した『バッテリー』『ダイブ!!』のころから、キラキラしたイケメンだった林。けれどどんな役でも、彼自身が持つ生真面目さが透けて見えるよう。決して器用そうではないのに、振り返って考えると幅広い役柄を自分のものにしている。あんな華やかな存在なのに、「姉ちゃんの恋人」のような、おどおどした役が似合うのか。「おっさんずラブ」にしても、彼だからこそこそコミカルなラブコメに終わらず、純愛モノへと昇華した。しばしば「自分の話をするのは苦手」という林だが、いざ演技になると、言葉にならない想いを幾重にもその表現へ丁寧に塗りこめていく。だから多くの人が彼の演技に惹きつけられるし、彼でなくちゃ! と次回作を心待ちにしてしまうのだろう。(文・浅見祥子)

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