尾野真千子、実話の映画化『20歳のソウル』で母親役
俳優の尾野真千子が、実話の映画化『20歳のソウル』(2022年公開)に神尾楓珠が演じる主人公の母親役で出演することが明らかになった。
本作は、中井由梨子のノンフィクション「20歳のソウル 奇跡の告別式、一日だけのブラスバンド」(小学館刊)及び「20歳のソウル」(幻冬舎文庫)を映画化したヒューマンドラマ。千葉県船橋市立船橋高校で受け継がれている応援曲「市船soul」の作曲者で癌により20歳という若さで亡くなった浅野大義さんの姿や、市船吹奏楽部の絆が生んだ奇跡を描く。神尾が主人公の青年・浅野大義さん、佐藤浩市が大義さんの恩師で吹奏楽部顧問の高橋健一先生にふんする。脚本は、原作者の中井が自ら務めた。
尾野が演じるのは、大義さんの青春を支え、息子の闘病を最期まで明るく勇気づけた母・浅野桂子さん。「特別な母親役でした」と語る尾野。「やはり実在する母というのはとてもやりにくいものです。ですが、とてもやりがいを感じました。本当の話に失礼のないように、当時を思い出して辛くさせるだろうとわかっていましたが家族の方に当時の事を質問し、撮影に挑みました。おかげさまで息子を全力で愛し、物語に向き合う事ができたように思います」
桂子さんに直接取材し、大義さんの物語を小説化、そして映画化につながった原作・脚本の中井は以下のようにコメントしている。
原作・脚本:中井由梨子
桂子さんに初めてお会いしたのは、二和向台の駅前でした。雨の中、傘をさして、近づいていく私に朗らかに「こんにちは」と挨拶をくださいました。
第一印象は、その朗らかな笑顔です。
息子さんを亡くされてまだ数か月。それなのに、取材でお話を伺っている間も、桂子さんは終始、笑顔と明るい声で話されていました。しかし何かの拍子に、ふっと瞳を潤ませる。
「ごめんなさい」と言いながらまた笑顔に戻る、小柄で可愛らしい方ですが、心の奥の芯のようなものがとても強く、それが普段の気丈さに現れているのだと思います。取材を始めて4年。今、桂子さんは私にとって、『20歳のソウル』上での関係を越え、本当の家族のように心の通じ合う大切な存在になっています。
尾野真千子さんが桂子さんの役をお引き受けくださったと聞いたときは、朗らかな明るい笑顔と笑い声、そして何よりさっぱりとした気丈な雰囲気が、桂子さんと強く共通していると感じました。
撮影現場で尾野さんと今回の役についてお話させていただいた時、「どのシーンを読んでも涙が出てくる」と仰っていました。その言葉通り、尾野さんはスクリーンの中で、笑顔の下に常に涙を湛えている桂子さんの繊細さを丁寧に汲み取りながら存在してくださいました。
この物語の中の“浅野桂子”という役は、私のフィクションも多く合わさっていますから、決して本物の桂子さんそのものではありません。しかし、この役を尾野真千子さんが体現してくださったことにより、逆に桂子さんが感じていたことがリアルに、ダイレクトに伝わっていると思います。