戸田恵子、役者として決断する難しさ 一度選んだ仕事は「後戻りできない」
マーベル・スタジオ最新作『エターナルズ』(全国公開中)の日本版声優を務めた戸田恵子がリモートインタビューに応じ、完成されたキャラクターに声を吹き込む際に心がけていることや、役者として決断する難しさについて語った。
『アベンジャーズ/エンドゲーム』後の世界を舞台に、7,000年近く人類の進化を見守ってきた新ヒーローチーム・エターナルズの活躍を描く本作。戸田は、エターナルズの精神的リーダーで、どんな傷も癒すことができるエイジャック(サルマ・ハエック)の吹き替えを担当した。
作品を鑑賞した戸田は、「とにかく美しかったです。監督が『ノマドランド』を撮ったクロエ・ジャオさんということで、『監督の頭の中はどうなっているのかな?』と不思議な思いで観ていました。(『ノマドランド』と『エターナルズ』は)真逆の作品ですけど、美しい映画という部分は重なりますよね」とジャオ監督作に見られる美しさを絶賛。個性豊かなエターナルズの面々にも惹かれたそうで、「ギルガメッシュのように素手で戦ったり、イカリスみたいに目から光線を放ったり、戦い方にもバリエーションがあって面白かったです」と興奮冷めやらぬ様子で語った。
キャラクターに声を吹き込む際、普段から意識していることは「特にないんです」と明かす戸田。完成された作品・キャラクターにピッタリと合うような声を吹き込むことが、声優としての役目だと説明する。
「本作であれば、エイジャックという完成されたキャラクターに合わせていくことが仕事なので、私のオリジナリティーは何もいらない。オーバーアクトでもいけないですし、力不足でもダメです。演じている方の声のトーン通りに声を吹き込めば、間違うことはありません。よく理解できていないところは、音響監督に質問をして、シチュエーション毎にトーンを合わせていきます。エイジャックが興奮してない声だったら、興奮してない声を出す。そうやって、ピッタリ合わせていけるようにすることが私の仕事です」。
エターナルズは劇中、人類の未来を左右する重大な決断を迫られる。決断を下す難しさというのは、舞台に多く出演する戸田も感じる時があるそうで、「舞台の仕事で役を受ける時、一度引き受けたら本当に引き返せないんです。長い期間お稽古をして、舞台で演じなければならないのと、ライブな仕事ということもあり、実際にやってみないとわからない大きな賭けです。そういった仕事を引き受ける時は、いつも決断ですよね」と語る。
「演じながら『あ~失敗した』と悔しがったり、結果的に『やってよかった!』って思うこともあります。仕事における最初の決断で、弱腰になって『やっぱり止めておこうかな』と思ってしまうと、その道は通らないことになってしまいますよね。挑戦するか、しないか。そこが第一に大きな決断ですし、すごく難しいところです」。
戸田といえば、アニメ「それいけ!アンパンマン」でアンパンマンの声を30年以上務めるなど、ヒーローと長年向き合ってきた。「アンパンマンには、パンを作ってくれるジャムおじさん、マントが破れたら縫ってくれるバタコさんがいたり、みんなに守られて何度も復活します。そこがスゴイところ。みんなのために戦っている。悪者と戦うんですけど、決して息の根を止めるのではなく、共存する優しいヒーローなんです」と改めて魅力を語る戸田は、「エターナルズはアンパンマンとタイプが違いますし、カッコよくなくちゃいけないと思いました」とも明かす。
両者を含め、ヒーローが愛される理由について聞いてみると、戸田は「みんなのために悪い人をやっつけてくれるからだと思います」と回答。「ヒーローには『人間のために悪に立ち向かう』という最大の思いがあるからカッコいい。自分に関係のない人をやっつけるのは、喜ばしいことではないです。歴代のヒーローは、そういう部分も相まってみんな好きになるんですよね」と笑顔で語っていた。(取材・文:編集部・倉本拓弥)