仲村トオル、20代で感じた限界の壁 壊すきっかけをくれた監督作品に二つ返事で出演
仲村トオルが13日、都内で行われた映画『愛のまなざしを』の公開記念舞台あいさつに登壇し、本作出演に至る思いとともに、若かりし頃の自身を回顧した。この日は、杉野希妃、斎藤工、中村ゆり、藤原大祐、万田邦敏監督も来場した。
本作は、愛の本質を見つめ、人間の性とエゴをあぶりだした愛憎サスペンス。精神科医・貴志(仲村)は妻・薫(中村)の死に罪悪感を抱きながらも、患者・綾子(杉野)との愛に溺れていく。しかし、独占欲が抑えられない綾子は思わぬ行動に出る……という物語が展開する。
万田監督とは映画『UNloved』『接吻』でもタッグを組んだ仲村は、「『UNloved』への出演は革命的なできごとでした。自分の意思や生理を極力排除した結果、見たことのない世界に初めて見る自分がいる、うれしい経験でした」と振り返りつつ、「(本作出演に)何の迷いもなかったです。強いて言うなら、『難しそう』と一瞬頭をよぎりましたが、俺が難しそうと考えていても万田監督だから大丈夫だと思いました」と吐露した。
また、過去に「万田監督の操り人形になりたい」と言っていた仲村は、「20代のころは、3年後の藤原大祐より生意気で、演出家に対して『俺は操り人形じゃねえよ』みたいな意識を持っていたけど、自分の心と脳みそだけで体を動かそうとしても、できる範囲が限られるという行き詰まりを感じていた」と思い返しながら、「(『UNloved』で)万田監督と出会い、人に操られるのが新鮮で、それまでの限界の壁の外側に出られた」ことから、今回も全幅の信頼を寄せて臨んだことを打ち明けた。
薫の弟・茂役の斎藤は、「小学2年生の時に初めてカメラの前に立ったのが万田さんの作品」ということから感慨深い表情を浮かべ、本作についても「理解することに時間がかかる」と“高評価”。というのも、斎藤は「劇場で消化できない違和感を持ちながらの帰り道が一番の映画体験」と思っているからで、近年多い、「消化が良い離乳食のような映画」と一線を画す本作に自信を見せていた。
そんな斎藤と仲村は縁がある。仲村が演じた役柄の幼少期を斎藤が演じたり、互いに別の万田監督作品に出演したり、斎藤のおじが経営する店に仲村がうかがったこともあるそうで、斎藤は「(2人の物語は)4部作くらいで今に至る」とうれしそうに笑った。
中村は、初共演の仲村の印象を告白。初対面時、仲村から「僕は共演する方のことをウィキペディアでちゃんと調べてから来るんだよ」と言われた中村は、「なんて細やかな気遣いをされる方なんだろう」と感動し、以降は自分も見習っていると語った。
オーディションで貴志の息子・祐樹役をつかみ、本作で俳優デビューした藤原は、「本当のお父さんみたいに話しかけてくださって楽しくできました」と仲村との撮影時を回顧。サイン交換もしたそうで、藤原が「厚めのクリアファイルに入れてあります」と大切に保管していることを伝えると、仲村は「将来、価値が出ると思って(交換した)」と会場を笑いに包んでいた。(錦怜那)