吉沢亮「青天を衝け」13歳から91歳までを完走 「想像を遥かに超える」制作統括・菓子浩語る
俳優の吉沢亮が日本資本主義の父と称された実業家・渋沢栄一を演じた大河ドラマ「青天を衝け」の制作統括を務めた菓子浩が、コロナ禍での1年4か月にわたる撮影を終えた現在の心境を明かした。
コロナ禍で「本当に完走できるのか」という不安
12月26日の最終回に向け、物語もいよいよ佳境となっているが、菓子によると栄一は最後まで“駆け抜ける”展開になるという。「実際の渋沢栄一さんも91歳までご存命で、最後の最後まで、死ぬ間際まで走り続けた方でした。なので通常、1年かけたドラマというのは、最後は過去を振り返るノスタルジー的な部分がメインになってくることが多いと思うんですが、このドラマでは最後まで次々と新しいことが出てきます」
2020年7月にクランクインし、アップは2021年11月。撮影はおよそ1年4か月にわたって行われたが、その撮影を振り返ると終始、コロナ禍の影響を色濃く感じる日々だったという。「思えばクランクイン直前に1回目の緊急事態宣言が出て、2か月遅れのスタートとなって。それから先もずっと感染が爆発したり治まってきたりを繰り返して。なのでスタッフもキャストも本当に完走できるのか、どこかで途切れてしまうんじゃないかという不安を抱えながら、日々の収録や編集をやってきました」と振り返り、クランクアップの日を迎えたときを述懐。「よくぞ無事に撮り切れたなと。放送に穴を開けることもなく、そして収録も止まることもなく。無事出せたということにまずは安どしました」と晴れやかな表情だ。
吉沢亮が13歳から91歳までを演じ分ける
栄一の生涯を描くにあたり、現在27歳の吉沢が13歳から91歳までを演じ分けることとなった。「もちろんこの大河の主役をお任せできると思って、お声がけしているんですけど、吉沢さんはその想像をはるかに超えてくるんです」と振り返る菓子。「とにかく難しい主人公だと思うんですよ。13歳から91歳まで演じてくださいというのが無理難題だし。それからステージがどんどん変わっていきますよね。最初の百姓だったところから、幕臣になったり、実業界の方に行ったりもします。渋沢栄一という一人の役でありながらも、多分その中に4人も5人もいろんな形の渋沢栄一がいて。でも吉沢さんはそれぞれのステージごとの栄一をすごく魅力的に演じていただいたと思います」と難役を演じ切った吉沢を称えた。
吉沢が91歳の栄一まで演じることに踏み切った理由について「20代の俳優さんですから、90代に見せるというのは限界があると思うんです」と前置きしつつ、「しかし何よりも、年齢は違っていたとしても、同じ吉沢亮さんという俳優に渋沢栄一の人生を演じていただくことがドラマとしての誠意だなと思ったのと、吉沢さんからもやりたいと言っていただいたこともあって、最後まで演じていただくことになりました」と経緯を説明。その上で「やはり吉沢さんは力強いお芝居もすごいですし、かつ繊細な表現でもすごく引き付ける力があって。本当に吉沢さんあっての『青天を衝け』だなと思いました。この難しい主役ができる人はなかなかいないんじゃないかなと思います」と吉沢とのタッグに満足げな様子を見せた。
「逆境に立ち向かう栄一」というのは当初からのテーマとして掲げられていたが、コロナ禍を通じて、本作の作り手たちが「登場人物たちの行動やセリフに励まされるという不思議な体験をした」とも。「もともとこういうテーマ、メッセージを伝えたいからドラマを作りますというタイプではなく、どうやったら楽しんでもらえるか、という考えで作っているんですが、その中で何か自然と今の時代にリンクするようなテーマになってきたのかなと思います」とあらためて本作の力強さを感じたという。
草なぎ剛はカメラが回ると慶喜にしか見えない
一方、栄一と並走してきた徳川慶喜を演じた草なぎ剛については「草なぎさんは天性といいますか。演じていらっしゃるのかどうかもわからないほど」だったと言い、「ご本人なんかもインタビューでは、全然歴史のことも知らないし、台本も自分のセリフ以外は読みませんとかおっしゃっていますよね。本当かどうか分かりませんけど」と笑ってみせる。
ところがいざカメラがまわると驚かされてしまうのだという。「草なぎさんも現場ではひょうひょうとしているんですけど、いざ本番でカメラが回ると、もう慶喜にしか見えない。撮っている方も、きっと慶喜ってこういう人だったんだろうなと思わされてしまう。そして(脚本の)大森美香さんも、ドラマの出来上がりをみながら先を書かれるなかで、きっと(草なぎの芝居に)勇気づけられたところもあったんじゃないかと思います」と振り返った。(取材・文:壬生智裕)