山田涼介が特撮ヒーローにハマる理由
ドラマ「時効警察」シリーズなどの三木聡監督がメガホンをとった映画『大怪獣のあとしまつ』(公開中)で主演を務めた山田涼介。本作で、巨大怪獣の死体処理に臨む特務隊の隊員をヒロイックに演じた彼の魅力について、三木監督が語った。「山田涼介でなければ」と感じたシーンとは……?
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本作は、全長380メートル(東京ドームの1.5倍)もの巨大怪獣の死体処理に、首相や官僚たち、国防軍、そして首相直属の戦闘部隊「特務隊」の面々が右往左往するさまを追う物語。山田は、政府からの任命で怪獣の死体処理の責任者に任命される特務隊一等特尉・帯刀(おびなた)アラタを演じている。昨年は、新選組を描く時代劇映画『燃えよ剣』で剣豪・沖田総司を好演し、華麗な殺陣も話題を呼んだが、これまでも人気漫画を実写映画化した『映画 暗殺教室』シリーズ(2015・2016)や『鋼の錬金術師』(2017)などで身体能力を発揮。本作でも「特撮に関するポテンシャルが高い」ことが、山田にオファーした理由の一つだったという。
「Hey! Say! JUMPのステージなどでも感じていたことなんですが、彼は立ち方がきれいなんですよね。この映画で山田君が演じるのはある種、ヒーロー。ヒーローが美しく立つ姿を見せたくて、彼ならやってもらえるだろうと。実際に撮っていても首の角度や何気ない仕草もきれいでしたね」
その「立ち方」とは一体、どんなことなのか?「直面した危機に対してどういう姿勢なのか、ということですね。危機、難題と対峙したときにポケットに手を突っ込んで『これどうするか』と考えながら斜めから向かうタイプと、すっと二本足で立って真っすぐに見据えるタイプがあると思います。それぞれ役者によっても違うと思うんですけど、山田君は後者のヒーローの立ち方ができる役者さんだなと。意外にいないと思います」
例えば、ウルトラマンやスーパーマン、バットマンなど、ヒーローのキャラクターによって立ち方が異なるという三木監督。「キャラクターを演じるにあたり、役者がどう立つのか。それは女性も同じですが、フレームに入って立った時にその人がどういう風に見えるのかが、大事なんじゃないかと思います。そこがぼんやりしていると、どういう気持ちでそこにいるのかがわからないということになる気がする。ヒロイックな立ち方以外にも、負の要素を抱えたタイプもあって、ヒース・レジャーが演じた(『ダークナイト』の)ジョーカーも、まずあの立ち方が新しかったんだと思います。だからその後、類似した悪役がたくさん出てきたし、さまざまな作品に影響を与えることになったんじゃないかと」
山田の出演シーンの中でとりわけ監督が特に目を見張ったのが、山田と土屋太鳳演じるアラタの元恋人で環境大臣秘書官・ユキノとのレストランでの逢瀬のシーンだったという。「山田君の目線が面白い、いいなと思いながら撮っていました。土屋さんを真っすぐに見ているんだけど、目線の置き方が独特で。あのシーンは具体的に『ここを観てほしい』と指示して撮ったわけではなくて。カットはこういう見え方になるということだけ伝えていましたが、表情などは彼に任せていました。これは山田涼介でなければ撮れない、とも思いました」
怪獣の死体がゴミになったり資産になったり、状況によってコロコロ対応を変える官僚たちに振り回されながら、使命を全うしようとするヒーローを好演する山田涼介。ラストシーンでは、彼の前にどんな光景が広がっているのか。(編集部・石井百合子)