「カムカム」ひなたと五十嵐の意外な結末!その必然性を制作陣が語る
いよいよ2週を残すところとなった「カムカムエヴリバディ」(月~土、NHK総合・午前8時~ほか、土曜は1週間の振り返り)。第22週は、ひなた(川栄李奈)と別れた五十嵐(本郷奏多)が、約10年ぶりに条映太秦映画村にアクションコーディネーターとしてやってきたところから話がスタート。ハリウッドで立派になった五十嵐を微笑ましく迎えるひなただったが、水曜放送の第105回では、五十嵐からある事実を告げられるという驚きの展開となった。このストーリーについて、演出を担当した深川貴志、制作統括の堀之内礼二郎が見解を述べた(以下、第105回までのあらすじに触れています)。
連続テレビ小説の第105作「カムカムエヴリバディ」は、昭和から令和にわたる時代をラジオ英語講座と共に歩んだ祖母・母・娘、3世代の親子の100年を描いた物語。第21週では、ハリウッドの映画制作チームが映画村を訪れてオーディションの準備を進めるなか、五十嵐が忽然と姿を現した。キャストとしてオーディションに参加するのかと思いきや、月曜放送の第103回では、渡米した五十嵐はハリウッドでアクションコーディネーターの「ブン・イガラシ」として来日したことが明らかになる。
時代劇スターになるという夢ではないが、新たな道で自分の人生を見つけた五十嵐を、微笑ましい表情で見つめるひなた。第105回でも、五十嵐はひなたとともに、伴虚無蔵(松重豊)にハリウッド映画出演を懇願するなど、過去の仲睦まじい二人を思い出させるようなシーンが続いた。そして、二人で飲みに行ったバーでも、五十嵐は「ひなたがいなかったら、いまの俺はなかった。ひなた、ありがとう」と感謝する。
いよいよ二人は再度結ばれるのか……と思ったが、五十嵐は「久しぶりにひなたとあって、決心がついた」とおもむろに発言。「ひなた、俺、結婚するよ」とほかの女性と結婚することを宣言し、いきなりの五十嵐の発言に戸惑いを見せるひなた……という流れが続いた。
この驚きの展開に、深川は「僕としても最初は『なんで?』という印象を持ったんです」と率直な胸の内を明かす。「でも藤本(有紀)さんの台本を読み込んでいくうちに、この展開は納得できました」と述べる。
その理由について「るい(深津絵里)さんは、常に自分の過去と向き合ってきた女性ですが、ひなたさんはあまりそういうことをしてこなかった。第19週では自分が五十嵐を苦しめていたのかもしれないという思いが描かれました。10年ぶりに五十嵐さんと再会し、その落とし前をつけることでひなたさんがこれからの道をしっかりと歩むことができると思ったんです」。第22週の頭から、ひなたと五十嵐は、以前の恋が蘇ったかのような雰囲気に見えるが、実際ひなたは恋をしているのではなく、かつての自分の気持ちと戦っているのだと解釈したという。
だからこそ、ひなたは五十嵐と顔を合わせるたびに、嬉しさの反面、ちょっとした違和感を覚えながら「これは恋なのか」と自分自身の心に問いかけているような表情を見せる。深川は「バーで五十嵐さんからほかの女性との結婚を告げられたあと、戸惑いはありましたが、吹っ切れたように『いまは仕事が楽しい』と笑顔を見せる部分で、ひなたさん自身が『これは恋じゃなかったんだな』と気づいたと思うんです。その意味で、ひなたさんが過去と向き合うために五十嵐さんの登場が必要でした。『ハッピーな展開』の意味についても考えさせられる回でした。」
堀之内も「取り方によっては、やけぼっくいに火がついたものの、あっさり振られてしまった……というコメディのようにとられてしまう可能性もあるシーンです。しかし、きちんと自分の過去と向き合うなかで、五十嵐さんに『いまはどうなの?』と聞かれたひなたが『いまは仕事が楽しい』と自分の現在地を再認識することで、しっかり過去と決着をつけて、前向きに歩んでいけるということを描けたんじゃないかなと思います」と説明する。(取材・文:磯部正和)