乃木坂46岩本蓮加、名優・宝田明さんをしのび黙とう「本当に優しかった」
アイドルグループ・乃木坂46の岩本蓮加が2日、都内で行われた映画『世の中にたえて桜のなかりせば』公開記念舞台あいさつに来場し、本作の企画を温めて劇場公開に並々ならぬ情熱を傾けていた故・宝田明さんをしのび、黙とうをささげた。この日は三宅伸行監督も出席した。
「桜」をモチーフにした本作は、不登校になった高校生の咲(岩本)が、老紳士の敬三(宝田さん)と一緒に終活アドバイザーとして働き、さまざまな境遇の人たちの終活を手伝いながら彼らの悩みに触れていく姿を描く感動作。本作のエグゼクティブプロデューサーであり、岩本とダブル主演を務めた宝田さんは、本作の完成披露舞台あいさつが行われた直後の3月14日に肺炎のため急逝。本作が宝田さんの遺作となった。
宝田さんとダブル主演を務めた岩本が「まだ(映画が公開された)実感がなかったんですけど、実際に友だちが公開初日に観に行ってくれたりして。感想を聞くようになってから、作品を届けられているんだなと。今はうれしい気持ちでいっぱいですね」と語ると、三宅監督も「やはり前回の舞台あいさつの時にはいらっしゃった宝田さんが今日はいないということに現実感がなくて。残念に思う自分がいるんですけど、ちょうど今日は桜が咲いていて、宝田さんを思い出すというか。この映画もそうやって皆さんの心に残るものになるといいなと思っています」と続けた。
撮影現場での宝田さんは「本当に優しかった」と振り返る岩本は、「最初の段階から、宝田さんからは自分の好きなようにやっていいよと、アドバイスというよりも、褒めていただくことが多かった。でも撮影の時には、何かを伝えたい時は、相手の目をしっかりと見るといいよというようなアドバイスをいただいたことはありましたね」とコメント。
さらに芝居が終わってもモニターチェックをせずに、現場に堂々と立っていたという岩本に対して、宝田さんが「大女優の片りんがある」と称賛したこともあったが、そのことについて岩本はあらためて「あんなに褒めてもらえるなんて思わなかった」と話す。「でも今ではそれが自信につながっていますし、今後、演技をする上でその言葉を思い出して、前を向いていけたらいいなと思います」とまっすぐなまなざしで語った。
宝田さんからは「孫のようだ」と言われ、かわいがられたという岩本。「現場でも特に堅い話や、演技の話をするわけではなく、久しぶりに会ってキレイになったね、みたいに声をかけてくださったりするので、笑顔が絶えなかったですね」としみじみ。「この作品で学べたことが本当にたくさんあるので、次に演技ができる機会があったら生かしていきたいなと思います」と、女優にあらためて向き合っていきたいという思いを抱いたようだ。
そしてこの日は、生前に宝田さんが収録していたメッセージ映像を上映。「わたしにとっては久しぶりの映画でございまして。やはり僕は映画からスタートした男ですから。やはり映画というものに大きな愛着と未練を感じております。いつか自分の思うような映画を撮りたいと思っていたんですが、その念願かなって撮ることができました。それはもちろん多くの方がサポートしてくれたおかげ。皆さんには心から感謝を申し上げたいなと思います」という内容のメッセージを聞いた岩本は、「いつもわたしが宝田さんとお話をする時は、映画に対しての愛をひしひしと感じる。そんな宝田さんがプロデュースする作品に、宝田さんとダブル主演という形で出させていただいたというのは、自分にとってすごく誇りに思えるというか、貴重な経験をさせていただいたなとあらためて感じました」と述懐。そして故人の宝田さんをしのび、観客とともに黙とうをささげた。(取材・文:壬生智裕)
映画『世の中にたえて桜のなかりせば』は全国公開中