浜辺美波、“負けず嫌い”を忘れずに デビュー10年で強まる作品と向き合う気持ち
岸井ゆきのが主演を務める映画『やがて海へと届く』(4月1日公開)で、親友の前から突然姿を消してしまうというすみれ役を務める浜辺美波。女優として10年ものキャリアを築いているなかで、新たな魅力を見せている。「ハングリー精神を失わないように前のめりで」という強い思いで女優として躍進する浜辺が、本作への思いや現在の心境を語った。
【インタビュー動画】浜辺美波、自分に負けたくない 10年のキャリアと変化を語る
『君の膵臓をたべたい』『思い、思われ、ふり、ふられ』といった青春ラブストーリーでは繊細な演技を披露し、はたまた『センセイ君主』『映画 賭ケグルイ』では強烈なインパクトを残す振り切った熱演を見せてきた浜辺。大ヒットコミックを実写化した『約束のネバーランド』でも存在感を発揮し、記憶も新しいドラマ「ドクターホワイト」では初の医療ドラマに挑戦した。今後も庵野秀明監督による『シン・仮面ライダー』(2023年3月公開)でヒロインを演じることが発表されており、活躍の幅を広げつつも、その勢いも衰えない。
『四月の永い夢』『わたしは光をにぎっている』などのヒューマンドラマで確かな手腕を発揮してきた中川龍太郎監督の新作映画『やがて海へと届く』で、新たな表情を見せている。浜辺は「どの役も被らないように作品選びをしているので、私自身も新鮮に感じることも多いです。とくに今回は、映画の色合い自体も今までの私にないような作品になっていたと思うので、応援していただいてる方にも、こういう作品に出演するんだなと楽しんでいただけるかなと。難しい役柄だったからこそ一緒に探しながらみていただけるんじゃないかなと思っています」と自信を見せる。
浜辺が演じたのは、引っ込み思案の真奈(岸井)とは対照的な性格のすみれ。入学直後の新歓コンパでなじめずにいた真奈をすみれが助けたことから、一気に距離を縮めることに。それから数年後、あるとき一人旅に出たすみれは行方知れずになってしまう。物語はすみれがいなくなって5年、現在と過去が交差しながら進んでいき、すみれの不在を受け入れられずにいた真奈は、ビデオカメラに残されていた親友の秘密を知ることになる。
「すみれは芯があって、肩で風切って歩く人という印象を受けるのですが、実際は自分にないものを持っている真奈に憧れと、嫉妬や恥ずかしさを感じるぐらいの尊敬が真奈に対してあるんだと思います。監督からは、すみれはすみれで何かを削ぎ落として後ろに捨てていくようにしながら成長しているんだよ、と言われて、それを踏まえながら役作りをさせていただきました」
親友役の岸井とは、ドラマ「私たちはどうかしている」でも共演はあるものの、映画での顔合わせは初めて。撮影を振り返って「一番大切にしたのは真奈との時間です。真奈の部屋で日差しが暖かくて、風が吹いて、こういう匂いがして……二人だけで過ごす時間をとても大事にして撮影をしました」と語る浜辺にとって、岸井との共演は「すごく安心感がありました」という。
「(岸井は)すみれが真奈のこういうところを愛おしいと思っていたんだな、というのを動作や存在から思わせてくださるので、無理せずに二人の関係性を築けたのは岸井さんのおかげだと思います。岸井さんは人に愛される素質がすごくある方だなと思いながら演じていました。作品が終わった後も、岸井さんが出ているドラマも目で追ってしまって、思わず連絡をしてしまったり。(撮影に至るまでの準備で)何かを特別したということはなかったです」
そんな浜辺は2011年から女優としてキャリアを積み重ね、早くもデビューから10年を迎えた。「たくさんお仕事いただけるようになって、すごくあの時には想像もできなかったようなありがたい環境にいるので、まだしばらくは前のめりでお仕事をしていきたいですし、ハングリー精神を持ち続けて仕事していきたいなと思います」と熱っぽく宣言する。
10年もの間に心境の変化もあるという。「小さい頃から(役者としての仕事を)やっていたこともあって、初めたばかりの頃はこの仕事がしたくて入ってきたわけではなかった」という浜辺だが、その当時は「いろいろな人と比べられたり、同じ世代の人のことはこうなのに、となったりして、先に負けず嫌いが出てきました」と語る。
「それが今では逆ではありますが、先にこういう役をやってみたいというところから、自分に負けたくないという感情が後から出てくるようになっています。プライベートの時間がもっと欲しいとか、落ち着きたいなという感情もゼロとは言えないのですが、それよりも後悔しないように。できるだけ時間をかけて、いろんな選択や作品と向き合いたいと思っています」
『やがて海へと届く』では、すみれの大学入学から卒業後にいたる時間が描かれるなか、浜辺の姿も変化していく。大切な人の喪失という繊細なテーマが得描かれるだけに、今後の女優としての新たな魅力を期待させる演技を見ることができるはずだ。(編集部・大内啓輔)