「カムカム」雪衣の後悔、るいの思い…圧巻の演技で開かれる過去の扉
最終週を残すのみとなった「カムカムエヴリバディ」(月~土、NHK総合・午前8時~ほか、土曜は1週間の振り返り)。第22週を締めくくる第107回では、雪衣(多岐川裕美)が入院したことが発覚し、るい(深津絵里)がお見舞いに駆けつけた。そこで雪衣は過去の後悔を吐露し、るいとその母・安子に謝罪するという、物語にとって非常に大きな意味をなすシーンが描かれた。
かつての雪衣は算太に…「カムカムエヴリバディ」場面カット【写真】
連続テレビ小説の第105作「カムカムエヴリバディ」は、昭和から令和にわたる時代をラジオ英語講座と共に歩んだ祖母・母・娘、3世代の親子の100年を描いた物語。
雪衣は雉真家に女中として入った当時を振り返り、安子に対して「意地の悪い、どすぐれぇ気持ちが沸き上がってきた」と思いを語った。幼少のるいに対して、ひどいことを言ってしまったことに後悔の念を表し「私があねぇなことを言わなければ、安子ちゃんとるいちゃんは離ればなれになることはなかったかもしれない」と謝罪。そんな雪衣の手を取ったるいは「もう、自分を責めんといてください。みんな間違うんです、みんな」と優しい言葉をかけ涙を流す。
本作で大きな闇となっていた、誤解が重なって生まれた悲劇。そこにスポットが当たることで、いよいよ安子とるい、ひなたの物語が終焉を迎えることが暗示される。このシーンについて、演出を担当した深川貴志は「多岐川さんがどんなお芝居をしてくださるのか楽しみでした。いまはコロナ禍で、あまりリハーサルもできないなか、多岐川さんが持ってきてくださったお芝居は、雪衣の後悔を描くものでありながら、るいさん側に立った素晴らしいものでした」と振り返る。「僕がすべきことは、この鮮度をどれだけいい状態で切り取るか。それだけを心がけました」と演者の芝居に全幅の信頼を寄せていたことを明かす。
さらに深川は、多岐川だけではなく勇役の目黒祐樹と深津の芝居も絶賛する。「多岐川さんが全体を引っ張ってくださっていたのですが、それを受ける目黒さんの佇まいからくる夫婦関係、さらに深津さんの受けの芝居も素晴らしかった。るいさんは、雪衣さんから言われたこと、さらには安子さんとのいきさつなど、すべてを鮮明に覚えていたと思います。でも、それをあまり出し過ぎると、雪衣さんを責めてしまうような視線になってしまう。そこで、雪衣さんに優しい目を向けることで、劇中で描かれていなかった雪衣さんと幼少期のるいさんの過ごした時間が、決して悪いものではなかったと想像してもらえると思ったんです」と演出意図を語る。
るいの「I hate you」という衝撃的な言葉を決定打に、生き別れたとなった安子とるい。るいが「思い出したくない」と鍵をかけていた過去が長い年月を経て 「安子に会いたい」という思いに変化した。そんな気持ちをさらに後押しするような雪衣の告白。物語は残すところあと1週。安子、るい、ひなたの人生にどんな結末が訪れるのか。楽しみに待ちたい。(取材・文:磯部正和)