嵐莉菜、初主演映画で監督と泣きながらハグ 自身のルーツに悩んだ過去も反映
モデル、女優の嵐莉菜が11日、都内で行われた映画『マイスモールランド』(5月6日公開)の完成披露舞台あいさつに登壇。映画初出演にして主演を務めた嵐は、5か国のルーツを持ち、ViVi 専属モデルとして活躍する現役高校生。自身が反映された本作の撮影エピソードを語るとともに、共演の奥平大兼や川和田恵真監督から、現場での新人らしからぬ様子が明かされた。
本作は、在留資格を失い日常が一変してしまった 17歳の在日クルド人の主人公サーリャ(嵐)が理不尽な社会と向き合いながら自分の居場所を探し、成長していく物語。ベルリン国際映画祭では、日本初の栄誉となるアムネスティ国際映画賞のスペシャル・メンション(特別表彰)に輝いた。
オーディションで役をつかみ取った嵐は、「絶対に演じたいという気持ちがあったので、その願いが叶ってうれしかったですが、ちょっと不安はありました」とはにかみながら、「周りに演技の先輩が多かったので、足を引っ張ってしまうんじゃないかという不安は常にあったんですけど、わたしができるサーリャを精いっぱい出し切ろうという気持ちで挑みました」と、熱い思いを胸に現場に立っていたことを吐露。
クライマックスの涙を流す場面では、監督も涙するほどのシーンになったという。「カットがかかったら監督が号泣してくださった。自分の演技で感動してくださったり、感情を動かすことができたのがうれしくて、やってきてよかったと思いましたし、残りも努力し続けようと思いました。(川和田監督と)泣きながらハグしました。一生忘れない初体験でした」
そんな嵐を抜擢した理由は? 初めは嵐の華やかな印象からサーリャのイメージができなかった川和田監督だが、「自分は何人だと思いますか?」と質問したときに返ってきた「複雑な心境」が、「サーリャが抱えているものにつながる」と感じた。その後の芝居審査で「最初から堂々として、全然違った表情を見せてくれた」ことからも「彼女とであれば一緒にやっていけるという確信」を持ったことを打ち明けた。
撮影中については、川和田監督は「出ずっぱりで大変だったと思いますが、それを感じさせない天真爛漫な姿で、堂々とカメラの前に立ってくれました。シリアスなシーンも多く、入り込めば入り込むほど精神的に辛いときもあったと思いますが、自分が感じたことをすぐに伝えてくれましたし、わたしも自分の思いを伝えながら、二人でサーリャを作り上げました」と回顧。
川和田監督は「サーリャのキャラクター性を莉菜さんが持っているものに寄せたり、莉菜さんから出てきた言葉からインスピレーションをもらったセリフもあります」とも話す。嵐は、例えばオリンピックなど大会で観戦する際、友達から『どこ(の国を)応援するの?』と聞かれることをあげ、「わたしが日本を応援しちゃダメなのかな? と考えるので、そういう部分を使ってくださり、自分の感情をのせながら演技をすることができました」と充実した表情をのぞかせた。
サーリャが心を開く少年・聡太を演じた奥平も、「現場で明るく、緊張や不安を見せずに堂々とお芝居ができているのはすごいと思った」と感心。嵐から話しかけてくれたことにも触れ、「僕より若いのにしっかりしていると思いました」と羨望のまなざしを向けた。
イベントの最後、嵐は「この作品は初めてながら、たくさんの方と作り上げた一生の宝物の作品です。一人でも多くの方に観てほしい気持ちでいっぱいです。ご覧いただいて、何か感じるものがあったらいいなと思います」と呼びかけた。(錦怜那)