視聴料をウクライナ支援に!アジアンドキュメンタリーズ
劇場公開作だけでなく、日本ではまだ紹介されていない無数の優れたアジアのドキュメンタリー映画を動画配信サービス、アジアンドキュメンタリーズ。アジアで生きる人々の現実を切り取り、ドキュメンタリー作家の視点で構成する作品群は、今の時代に重要なメッセージを伝え、さまざまな問題を考えるきっかけを与えてくれる秀作ぞろいだ。
ウクライナはアジアではないが、同サービスは4月からウクライナ支援のために「ウクライナ 自由への闘い」と題したウクライナ緊急支援企画を実施。3月に先行配信した『ピアノ-ウクライナの尊厳を守る闘い-』に続いて、4月は2本の日本初公開作品と1本の日本初配信作品の計4作品の視聴料を対象として、ウクライナ大使館に寄付する。
作品のセレクトや買い付けを手掛けるアジアンドキュメンタリーズの伴野智代表は、アジアという枠を超えた例外的な今回の企画の意図を、次のように語った。
「今回のロシアによるウクライナ侵攻によって、平和な日々や自由な暮らしが、決して当たり前に与えられるものではないことに、わたしたちは改めて気づかされたと思います。祖国や家族、尊厳や自由を守るために闘っているウクライナの人々にできる限り寄り添って、支援の声を上げることが、今、とても大切なことだとわたしたちは考えています」
アジアンドキュメンタリーズの利用者からは、「日々のニュースだけではわからない、武力侵攻の経緯を知るきっかけになった」「改めて自由の尊さをかみしめた」「決して人ごとではなく、自分事としてとらえなければならないと強く感じた」といった反応が寄せられているという。一方で、「ドキュメンタリーを配信する者が、ウクライナ側に偏って良いのか?」「今、ウクライナを(直接)支援することは、戦争行為に加担することではないか?」といった批判的な意見も。
こうした意見に対して、伴野代表は「さまざまな意見があることを承知の上で、わたしどもは支援の取り組みを始めました。まずはウクライナがどんな国で、どんな文化や歴史があったのかに興味を持っていただきながら、今回の事態を自分なりに考える機会にしていただきたいと思っています」と語る。ドキュメンタリー映画を通してその国について学び、今自分たちに何ができるかを考えるきっかけを作ること。これは2018年8月からサービスを開始したアジアンドキュメンタリーズが、当初から掲げている理念であり願いでもある。
なお、この特集を単品購入495円(税込)した視聴料の全額、あるいはアジアンドキュメンタリーズの月額見放題で契約中で、この特集の作品を視聴した場合は495円(税込)が在日ウクライナ大使館へ寄付される。期間は2022年4月30日まで(延長の場合もある)。(取材・文:今祥枝)
ウクライナ関連のドキュメンタリーは、以下の4作品が配信中。
『ピアノ-ウクライナの尊厳を守る闘い-』
(2015 / 監督:ビータ・マリア・ドルィガス / 製作国:ポーランド)
2014年、当時の親ロシア派のヤヌコーヴィチ政権がEUとの連合協定の交渉を停止したことや、蔓延する政権の汚職に対して反発する市民や学生が、機動隊と衝突して起きた騒乱「ユーロ・マイダン革命」。この騒乱のさなかに、バリケードにされていたピアノを音楽学生が救い出し、広場で演奏したことが人々の心をつかんでいくという出来事を記録した作品。
『地球はオレンジのように青い』
(2020 / 監督:イリナ・ツィリク / 製作国:ウクライナ)
戦争下のウクライナに住むアナと4人の子どもたち。撮影監督を夢見る長女・ミラが、戦火の中を生きる自らの家族を撮影する姿を追うドキュメンタリー作品。
『すべてが燃えている』
(2014 / 監督:オレクサンドル・テクンスキーほか / 製作国:ウクライナ)
「ユーロ・マイダン革命」の衝突によって広がっていく暴力について、怒りや憎しみが混乱を生み、やがて正義と悪の境界がぼやけていくという武力衝突の悲しみをつづったドキュメンタリー作品。
『ヒート・シンガーズ 労働組合合唱隊』
(2019 / 監督:ナディア・パルファン / 製作国:ウクライナ)
ウクライナの暖房会社の労働組合が結成した合唱隊のドキュメンタリー作品。戦争をテーマにしていない、ウクライナの地方都市の日常を映す。