ポン・ジュノ、菅田将暉&原田美枝子W主演作は「野心的であざやか」
菅田将暉と原田美枝子がダブル主演を務める映画『百花』(9月9日公開)について、『パラサイト 半地下の家族』のポン・ジュノ監督が「映画は最初から野心的であざやかだった」とコメントした。
本作は、映画プロデューサー・脚本家の川村元気が2019年に発表した同名小説を映画化する作品。原作者の川村自身が監督・脚本も担い、記憶を失っていく母と向き合うことで封印していたはずの過去の記憶に向き合うことなる息子・葛西泉を菅田、すべてを忘れていくなかでさまざまな時代の記憶を交錯させていく母・葛西百合子を原田が演じる。
そんな本作を鑑賞したポン・ジュノ監督は、「映画は最初から野心的であざやかだった。絶妙なロングショットは、非常に繊細かつ鋭敏に演出されていて、最後まで緊張感が続く」とコメント。
さらに、「何よりも感動したのは、映画の後半で、主人公の泉が母の百合子に『なんで忘れてんだよ、こっちは忘れらんねえんだよ』と叫ぶ場面。そしてラストに、母親が求める『半分の花火』が何だったのか、その本当の意味に彼が気づく。なんと感動する瞬間なのか。改めて、息子と母の親子関係の本質を力強く感動的に描いた作品だ。素晴らしい作品を見せてくれたことに、感謝を伝えたい」と印象的な場面についても言及した。
その他にも、山田洋次監督、岩井俊二監督、スタジオジブリ・プロデューサーの鈴木敏夫といった豪華な面々が本作の感想コメントを寄せている。コメント全文は以下の通り。(編集部・吉田唯)
コメント全文
■山田洋次
凝縮された美しさ。
奇想天外な物語がある一方、誰もが身に覚えのあるような身近なストーリーもある。
認知症がじわじわと進行しつつある母親に、出産を控えた息子夫婦が向き合う、という誰にとっても身につまされるような、悪く云えば日常的なドラマを、思い切って凝縮してみる、何百気圧のプレッシャーをかけてギュウギュウ圧縮すると、透明なキラキラした美しい結晶体に変化する。
川村監督の『百花』はそんな映画だ。
ワンシーンワンカットで撮影された、いわば「長回し」の大胆な演出スタイルが不思議に飽きさせない。うまい演出とは云いたくない、この作品の力はスタイルではなく、このドラマにかけた監督のエネルギー、情念、憧れ、愛情、といったもの、つまりハートなのだということをしみじみ思わせてくれたし、実は初演出の川村元気君自身が完成した作品を見てそのことに気づき、衝撃的に思いあたっているに違いない。
「カットとカットの間に神が宿るんだ、それが映画というもんだよ」と、ぼくに語ってくれた黒澤明監督の温顔をしみじみ思い出す。
■ポン・ジュノ
映画は最初から野心的であざやかだった。絶妙なロングショットは、非常に繊細かつ鋭敏に演出されていて、最後まで緊張感が続く。
何よりも感動したのは、映画の後半で、主人公の泉が母の百合子に「なんで忘れてんだよ、こっちは忘れらんねえんだよ」と叫ぶ場面。そしてラストに、母親が求める「半分の花火」が何だったのか、その本当の意味に彼が気づく。なんと感動する瞬間なのか。改めて、息子と母の親子関係の本質を力強く感動的に描いた作品だ。素晴らしい作品を見せてくれたことに、感謝を伝えたい。
■鈴木敏夫
母の記憶とリンクするピアノ曲と抑制された音楽と。
本当に久しぶりに映画に浸った。
■岩井俊二
記憶とは歪んだイビツな鏡なのかも知れない。母にとって小さな湖が、海と映る。果てなく大きな存在が母であるその息子の鏡には。